研究課題/領域番号 |
24657044
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松田 学 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30282726)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒスタミン / 乳腺 / 乳汁分泌 / ヒスチジン脱炭酸酵素 / タイトジャンクション / セロトニン / 細胞培養 |
研究概要 |
【ヒスタミン(HA)/HDCと泌乳】野生型マウスの出産前後で、Hdc遺伝子mRNAの発現量を調べたところ泌乳期にHDC発現量の増加がみられた。一方、HAの4つの膜受容体の発現量を調べたところ、すべての型の発現が確認された。なかでも1型と2型の受容体mRNAの発現量が多かったが、HDC欠損乳腺と野生型乳腺、あるいは出産前後において、発現量の顕著な違いは認められなかった。また、単離した乳腺上皮細胞でも同様の受容体型の発現傾向がみられた。この結果は、乳腺自体にHAの自己傍分泌回路が備わっていることと、泌乳期のHDC発現調節により何らかの乳腺機能の制御が行なわれている可能性を示唆しており、乳腺自体が持つHAシグナルが泌乳制御に関与していることを裏付けた点で重要性を持つ。【HDC-KOマウスの乳汁組成】HDC-KOマウスのミルク組成分析から、 K濃度が顕著に低く、Na濃度が顕著に高いことがわかった。正常では、初乳から成乳への移行に際し、タイトジャンクション(TJ)の強化に伴ってK/Na比の増大がみられるが、HDC-KO乳腺ではこの分泌活性化に関わる段階が阻害されていると考えられる。この結果は、HDC-KOマウスの乳汁分泌不全の理由を解明する重要な手がかりとして、TJ形成の関与という全く新しい知見をもたらした点で重要な発見となった。【乳腺培養細胞におけるHA作用】乳腺自体がもつHA自己傍分泌回路の機能を調べるため、Transwell培養したウシ乳腺上皮細胞を用いて、HDCおよびヒスタミン受容体阻害剤の細胞機能への影響を調べた。その結果、ウシ初代培養細胞において、1型ヒスタミン受容体(H1)阻害がTJの崩壊と上皮の透過性増大を誘導することがわかった。これは、乳腺上皮におけるHA/H1 シグナル低下によるTJ形成不全がHDC-KOマウスの泌乳異常の原因であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDC/ヒスタミンによる泌乳制御に関しては、当初の予想を上回る成果を上げ、HDC-KOマウスがなぜ十分量の乳汁を作れないのか、その仕組みに関して、大きく理解が進んだ。ヒスタミン受容体阻害薬がTJ形成を阻害するという新しい知見は、培養細胞でTJ形成の促進により泌乳の活性化が起こる可能性を示唆するもので、目的とする培養細胞での分泌活性化の再現に向けた重要な手がかりを得たことになる。一方で、研究の進展を受けて、ヒスタミン関連の研究に時間と研究費を割かれたこともあり、泌乳に伴う遺伝子発現の変化などその他の研究において計画に若干の遅れが認められる。研究費も適正に使用し、全体としてみれば、順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、HDC-KOマウスの乳汁分泌不全が、H1シグナルの低下によって生じたTJ形成不全に起因する可能性が高い。培養細胞にTJ形成を促すためには長期に及ぶ極性培養が必要なことを鑑みれば、従来の培養法ではTJ形成が不完全であったことから乳腺細胞の分泌活性化が生じなかった可能性が考えられる。そこで、H1シグナルからTJ形成に至る分子的な仕組みを研究した上で、TJ形成の促進が培養乳腺細胞の機能に及ぼす影響について重点的に調べていく予定である。 これと並行して、乳腺上皮分泌活性化の分子マーカーの探索を継続していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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