研究課題/領域番号 |
24657044
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松田 学 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30282726)
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キーワード | ヒスタミン / タイトジャンクション / 乳腺 / 乳汁分泌 / 細胞培養 / 分泌活性化 |
研究概要 |
1.【乳腺モノアミンの作用機序に関して】株化された培養乳腺上皮細胞MCF10Aに対するヒスタミンシグナル阻害剤添加の影響を調べ,他ならぬ乳腺上皮細胞の細胞内ヒスタミン受容体の阻害剤DPPEが,乳腺上皮シートの電気抵抗TEER低下を促すことが明らかにした.TEERの低下は,細胞間経路のイオン透過性の増大を示しており,タイトジャンクション(TJ)の特性変化によるものと考えられた.そこで,およそ50種類のタイトジャンクション関連遺伝子発現に対するDPPEの影響を調べたところ,いくつかの発現変化を検出した.さらに,タンパク質レベルでの発現を調べ,DPPE処理によるCldn1とTjp1の発現低下が明らかになった.さらに,DPPEによるp38 MAPKのリン酸化促進と,p38 MAPK阻害剤存在下でのDPPE作用の消失から,DPPE作用はp38 MAPKによって仲介されることが強く示唆された. Cldn1とTjp1の同様の発現変化がHDC-KOマウスの泌乳乳腺の遺伝子発現パターンでとも一致した.これらのデータから,HDC遺伝子欠損から泌乳不全に至る分子的な経路の概略に関する強い仮説の提唱に役立った.また,ヒスタミン作用とセロトニン作用の相似点と相違点が明らかとなった. 2.【分泌活性化の可視化と培養液評価システムの開発に関して】出産を挟んだ乳腺上皮分泌活性化の指標となる分子を,マイクロアレイのデータベースおよびリアルタイムPCR法により探索を行なった.その結果,出産に伴い 3.【その他に関して】 本研究に用いるRNA検出などの基盤技術をラボ内で構築し標準化する作業の一環として,分泌活性化を経て生産される乳汁に含まれるビタミンの乳児への影響について研究を行ない,ビタミンDがDES症候群の発生を抑制することを発見した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にあるとおり,乳腺上皮のタイトジャンクションの形成に関するヒスタミンの作用とその機序についての新知見が得られたことなど,着実な進展は認められた.しかし,ヒスタミンのMCF10A細胞を用いた実験では,予想外にも形成されたタイトジャンクションの性質の一部が培養血清や生理活性物質のロットによって大きく影響を受けることが明らかになったことから,その検証と善後策模索のために,時間と費用が費やされたため,やや計画に遅れを生じている. また,研究協力者である海外研究者との特許申請をめぐる行き違いから,論文の発表に遅れを生じているが,投稿の日は近づいている.
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今後の研究の推進方策 |
ヒスタミン欠乏による泌乳不全の解析を切り口として,乳腺分泌活性化の理解に向けた乳腺培養系の確立を目指す基本方針に変わりはない.主題である乳腺におけるヒスタミン作用の機序の解明をさらに進めていく. また, 分泌活性化で発現が促進される遺伝子としてリン酸輸送体を見出したので,それを細胞ソーティングやマーカーに利用して,分泌活性化した乳腺細胞の機能を維持する培養法の開発や,乳腺の分泌活性化の可視化などに応用していく. 成果の論文発表による公表も進める.
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