研究課題/領域番号 |
24657044
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松田 学 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30282726)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 泌乳 / 乳腺 / ミルク / ヒスタミン / リン酸輸送体 / タイトジャンクション |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標として掲げた培養細胞を完全な泌乳に導くレシピの発見には至らなかったが,それを目指す過程でもう一つの目標であった泌乳調節機構に関わる新たな発見を得ることができ,泌乳という現象の理解を深めることができた. 1.【乳腺モノアミンの作用機序】株化ヒト乳腺上皮細胞MCF10Aに加え,初代マウス乳腺上皮細胞,株化ウシ乳腺上皮細胞に対するヒスタミンシグナル阻害剤添加の影響を調べ,乳腺上皮細胞自体に存在する細胞内ヒスタミン受容体の阻害剤DPPEおよび細胞膜型1型受容体の阻害剤が,乳腺上皮シートの電気抵抗TEER低下を伴うタイトジャンクション(TJ)の特性変化を促すことが明らかにした.これには,Srcの活性化阻害,p38MAPKの活性化亢進,Tjp1タンパク質の減少およびCldn1の発現減少が関与している可能性が示唆され,HDC遺伝子欠損から泌乳不全に至る分子的な経路の概略に関するより詳細な仮説を提唱できた. 2.【分泌活性化の指標】前年度までに乳腺上皮分泌活性化の指標となる分子を探索し,いくつかの候補を得た中で.従来泌乳の指標と考えられてきたカゼインなどのミルクタンパクや脂質合成に関わる遺伝子群とは異なり,HDC遺伝子欠損マウスで発現低下が認められる分子としてリン酸輸送体を同定した.リン酸輸送体は,従来の乳タンパクに代わる泌乳の指標分子として有用であるとともに,乳腺活性化が多段階の反応であることを証明するうえで重要な分子となるものと期待できる. 3.【乳腺培養系の単純化と株の洗練】これまで泌乳に必要なTJ形成を促せなかったマウス乳腺細胞に,TJ形成を促す培養手法を開発できた.この技術と経験を応用し,株化ウシ乳腺上皮由来pBMEC-YKP10細胞に速やかなTJ形成と泌乳の指標となるカゼイン種の発現を促すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にあるとおり,本研究の最終目標として掲げた培養細胞を完全な泌乳に導くレシピの発見には至らなかったが,それを目指す過程でもう一つの目標であった泌乳調節機構に関わる新たな発見を得ることができ,泌乳という現象の理解を深めることができた.とくに泌乳に必要なタイトジャンクションの形成に関するヒスタミンの作用機序について,Srcと新知見が得られたことなど,着実な進展は認められた.しかし,当初モデル細胞として使用したMCF10A細胞の継代に伴う性質変化により,図らずも多大な時間と費用が費やされ計画に遅れを生じてしまった点は否めない.一方,そのトラブルシューティングと代替法模索の過程で,従来不可能であったマウス乳腺にTJ形成を促す新規培養法の確立と,ウシ乳腺細胞に乳タンパクを効率良く生産させることができた点は,予期せぬ収穫であった.計画通り泌乳の最盛期にのみ発現する分子指標を得た点も意義深い.しかし,何件かの学会発表は行ったものの,論文による成果の公表に時間がかかっている点で遅れをとっている.
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今後の研究の推進方策 |
論文を執筆し,研究成果を公表する. 論文のリバイスに必要なら追加実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞の継代による性質の変容という予期していなかった事態により研究に遅れを生じてしまったため,成果の発表に時間を要することとなった.そのため,論文投稿に関わる費用として一部を保留した.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の成果論文発表の準備・投稿・掲載にかかる費用として使用する.
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