[本年度] ヒスタミンシグナルの阻害により泌乳が抑制される現象の理解に向けて行った実験について、前年度から繰り越した数万円の予算を用いて誌上での発表を試みたが、追加実験に追われ公表には至っていない。一方、追加実験の過程で、ヒスタミンが細胞極性の維持に働いて泌乳を支えることを示す傍証と、インスリンやコルチコイドなどの泌乳を支える体制ホルモンが細胞極性を高め特定のタイトジャンクションの発現を促すという新知見を得て、学会大会にて発表した。 [全年度] 泌乳中の個体にみられるような盛んな乳汁合成と分泌を培養細胞で再現し、将来のバイオリアクター開発への礎を築くことを目標として本研究を企画した。ヒスタミン欠乏による泌乳不全とセロトニンによる泌乳抑制という現象を手掛かりに、乳腺が持つ泌乳抑制の仕組みを解除することで、培養した乳腺上皮細胞に乳汁を生産させた。また、その実験系を利用して、乳腺上皮の分泌活性化の仕組みを理解することを試みた。その結果、モノアミンや体制ホルモンが協働的に乳腺上皮の極性を高め泌乳を促す仕組みの理解と、分泌活性化の指標となる分子の同定を行うことができたが、培養系で同指標分子の発現を高度に誘導するには至らず、さらなる研究の余地が残された。
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