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2012 年度 実施状況報告書

生命のかたちの跳躍的転換「多細胞化」の初期過程の進化形態学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24657045
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関東京大学

研究代表者

野崎 久義  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40250104)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード多細胞化 / 群体性ボルボックス目 / テトラバエナ / 微細構造 / 原形質間架橋
研究概要

群体性ボルボックス目は、細胞の数や分化レベルで進化的中間段階の種が現存する、多細胞化研究のモデル生物群である (Kirk 2005, BioEssay)。我々はこの系統で最も初期に分岐した4細胞性のテトラバエナ (Tetrabaena) に注目することで、多細胞化の初期進化を明らかにできると考えている。本年度は、免疫蛍光染色によりテトラバエナの微小管性鞭毛根 (MTR ; 基底小体から生じる4本の微小管束構造) が非回転対称な配置であり、単細胞のクラミドモナスとは異なることを明らかにした (新垣ら 2012, 日本植物学会第76回大会) 。従って、テトラバエナの各細胞は多細胞体の一部として機能するために、クラミドモナスとは異なる細胞構造を持つと考えられた。一方、多細胞体は形態形成時に各細胞が適切な配置を維持するための架橋構造(原形質連絡)の獲得により、決まった形の細胞の集合をもつと考えられている。しかし、テトラバエナの微細構造に関する研究はNozaki (1990, Phycologia)の栄養群体の基本構造観察だけであった。従って、テトラバエナの同調培養系を立ち上げ、栄養細胞及び、形態形成中の細胞を透過型電子顕微鏡により観察した。その結果、テトラバエナの形態形成中の娘細胞間で原形質連絡が確認できた。また、クラミドモナスで2層である眼点の顆粒もテトラバエナで3層であるという違いも明らかとなった。これらの形態学的特徴はより細胞数の多いボルボックス科の生物にも認められ、4細胞の段階で獲得されたものと推測された(新垣ら 2013, 日本藻類学会第37回大会)。また、群体性ボルボックス目のオルガネラゲノムの非コード領域はテトラバエナが分岐した以降急激に増大した可能性が示唆された(Hamaji et al. 2013, PLoS ONE)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまで殆ど細胞学的な研究がなかった群体性ボルボックス目の最小細胞数4のテトラバエナに着目し、本生物が細胞の非回転対称性と原形質間架橋をもつことを形態学的に証明し、本生物が最もシンプルな多細胞体であることを明かににした。また、16細胞性のゴニウムのオルガネラゲノムを解読し、群体性ボルボックス目の多細胞化とオルガネラゲノム進化に深い洞察を与えた。

今後の研究の推進方策

今後、更に細胞学的な観察を実施する。また、テトラバエナの全ゲノム解読を実施し、多細胞化した直接的な原因遺伝子を推定する予定である。

次年度の研究費の使用計画

全ゲノム解読のための新型シーケンサーキット等の消耗品、抗体染色や電子顕微鏡関連の物品を購入する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Mitochondrial and plastid genomes of the colonial green alga Gonium pectorale give insights into the origins of organelle DNA architecture within the Volvocales.2013

    • 著者名/発表者名
      Hamaji, H.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 8 ページ: e57177.

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0057177

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Organelle genome complexity scales positively with organism size in volvocine green algae.2013

    • 著者名/発表者名
      Smith, D. R.
    • 雑誌名

      Mol. Biol. Evol.

      巻: 30 ページ: 793-797

    • DOI

      10.1093/molbev/mst002

    • 査読あり
  • [学会発表] 4細胞性初期多細胞体テトラバエナ (緑藻綱、ボルボックス目) の微細構造観察2013

    • 著者名/発表者名
      新垣陽子、豊岡博子、野崎久義
    • 学会等名
      日本藻類学会第37回大会
    • 発表場所
      山梨大学甲府西キャンパス
    • 年月日
      20130318-20130319
  • [学会発表] 群体性ボルボックス目Gonium pectorale のオルガネラゲノム2013

    • 著者名/発表者名
      浜地貴志、Smith DR、野口英樹、豊田敦、鈴木雅大、豊岡博子、藤山秋佐夫、西井一郎、Marriage T、Olson、野崎久義
    • 学会等名
      日本藻類学会第37回大会
    • 発表場所
      山梨大学甲府西キャンパス
    • 年月日
      20130318-20130319
  • [学会発表] 新垣陽子・豊岡博子・浜村有希・東山哲也・野崎久義2012

    • 著者名/発表者名
      新垣陽、豊岡博子、浜村有希、東山哲也、野崎久義
    • 学会等名
      日本植物学会第76回大会
    • 発表場所
      兵庫県立大学姫路書写キャンパス
    • 年月日
      20120915-20120917
  • [備考] 細胞数の増加とともにオルガネラゲノムは増大する: 群体性ボルボックス目藻類の比較ゲノム

    • URL

      http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/tayousei/information.html#info130316

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公開日: 2014-07-24  

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