研究課題
緑藻綱ボルボックス目のスポンディロモルム科は膨潤しない細胞壁で細胞同士が接続した群体を形成することで他のグループと区別されている。4属15種が記載されているが、稀産であることや培養が困難なことから研究が遅れてた。我々は採集時期や培養法を検討した結果、4細胞性のPascherina tetrasの新規培養株を世界で初めて確立することができたため、それらの形態学的な観察と分子系統解析を実施した。分子系統解析の結果、Pascherina と同じスポンディロモルム科に分類されていたPyrobotrysとは系統的に分離し、スポンディロモルム科は多系統であることが明らかになった。また、緑藻ボルボックス目の中で単細胞から群体・多細胞へ進化したことが少なくとも4回独立に起きたことが推測された。 Pascherinaはシアワセモ(Tetrabaena)と同じ最も細胞数の少ない4細胞性群体をもつ。しかし、Pascherinaの場合は近縁な生物が単細胞性のものしかないので、ごく最近4細胞化したことが推測され、本生物を用いた多細胞化の初期に関する今後の研究が期待される。また、シアワセモのゲノム解読が国際共同研究で進展し、環状のミトコンドリアオゲノムが明らかになった。このことは群体性ボルボックス目の起源では単細胞クラミドモナスとは異なり、環状のミトコンドリアゲノムであったことを示唆する。また、シアワセモの核ドラフトゲノム配列が利用可能となり、今後の多細胞進化の研究に大いに役立つことが期待される。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Phycologia
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