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2013 年度 実施状況報告書

非視覚性の光受容ニューロンにおけるオプシンの機能分化と新たな光シグナリング経路

研究課題

研究課題/領域番号 24657052
研究機関東京大学

研究代表者

小島 大輔  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60376530)

キーワード神経科学 / シグナル伝達 / 光生物学 / 網膜 / 概日時計 / オプシン / OPN4 / ipRGC
研究概要

交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を遂行し、以下の成果を得た。
概日時計を明暗サイクルに同調させる「概日光受容」は、様々な動物において見出される普遍的な機能である。哺乳類の概日光受容は網膜の光感受性神経節細胞ipRGCが担うが、私共のこれまでの研究成果から、ipRGCの光受容蛋白質OPN4が新たなシグナル伝達経路を駆動する可能性が浮かび上がってきた。本年度はまず培養細胞を用いたモデル実験系において薬理学的実験を行ったところ、この新規シグナル伝達経路が既知のOPN4シグナリング経路とは独立に作動することが示唆された。さらにこのシグナル伝達経路を個体レベルで解析するため、マウスOpn4遺伝子プロモーター制御とCre/loxPシステムを利用して、(1) 前年度この経路に関与することが示唆されたG蛋白質サブタイプをipRGC特異的にノックアウトする組換えマウス、(2) このシグナル伝達経路の応答を検出する発光レポータ遺伝子をipRGC特異的かつ高効率で発現するトランスジェニックマウス、の作成を進めた。一方、多くの脊椎動物は2種類のOpn4重複遺伝子(Opn4-1およびOpn4-2)をもつが、哺乳類は例外的にこのうち片方(Opn4-1)を失っている。Opn4重複遺伝子の機能分化がどのような生物学的意義を持つのかを検証するため、組換え酵素Cre存在下でニワトリcOpn4-1もしくはcOpn4-2遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(cOpn4-1 TgおよびcOpn4-2 Tg)系統を樹立した。現在これらの系統を、ipRGC特異的にCreを発現する組換え系統との交配を行い、ipRGC特異的にcOpn4-1もしくはcOpn4-2を発現するマウスの作成を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

培養細胞を用いたシグナリング解析や、候補G蛋白質サブタイプのipRGC特異的ノックアウトマウスの作成は順調に進んだ。ただし、新規OPN4シグナリング経路を介した光応答を検出する発光レポータ発現マウスの作成、ならびにipRGC特異的にニワトリcOpn4-1もしくはcOpn4-2遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの作成に、想定以上の時間を要したため、これらのマウスを用いた解析が完了しなかった。これら未完了部分の解析は、期間延長して翌年度に続行することにした。

今後の研究の推進方策

平成25年度までに完了しなかった下記の研究項目を遂行する。
これまでに作製した、候補G蛋白質サブタイプのipRGC特異的なノックアウトマウスと、発光レポータマウスとを交配する。このマウスから網膜を単離して発光イメージングによる光応答解析を行うことにより、ipRGC光応答における新規OPN4シグナル伝達経路の重要性を検証する。また、候補G蛋白質サブタイプのipRGC特異的なノックアウトマウスを用いて行動リズムの光同調や瞳孔の対光反射を比較解析し、新規OPN4シグナル伝達経路が個体レベルの生理現象においてどのような役割を果たすのかを調べる。一方、これまでに作製したcOpn4-1 TgマウスもしくはcOpn4-2 Tgマウスと、OPN4-KOマウスとを交配させることにより、ipRGCにニワトリcOpn4-1もしくはcOpn4-1のみを相補的に発現させる。これらのマウスから網膜を単離してipRGCの光応答を解析すると共に、マウス個体の行動リズム解析を行う。野生型マウスとの比較解析により、哺乳類が「なぜOpn4-1を失いOpn4-2を残したのか」という進化学的な重要問題を検証する。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度に、4種類の遺伝子組換え(Tg)マウスを外注で作製し、これらを別のTgマウスと交配して、単一細胞レベルでの光応答解析や個体レベルでの行動解析を行う予定であった。しかし、外注したTgマウスの作成に想定以上の時間を要したことにより、これらのTgマウスを用いた交配や解析が遅延しているため、次年度使用額が生じた。
「今後の研究の推進方策」欄に記した計画を完了させるため、期間延長した助成金は主として物品費に充当する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Spectral sensitivity of light-induced body color change in larval zebrafish2013

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kojima
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第35回大会
    • 発表場所
      イーグレひめじ(兵庫)
    • 年月日
      20130713-20130714
  • [学会発表] Photic regulation of body colour in zebrafish

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kojima
    • 学会等名
      The 6th Asia & Oceania Conference on Photobiology
    • 発表場所
      Sydney, Australia
    • 招待講演
  • [学会発表] 動物の背地適応を制御する光受容分子の探索

    • 著者名/発表者名
      小島大輔
    • 学会等名
      分子研研究会「ロドプシン研究の故きを温ねて新しきを知る」
    • 発表場所
      岡崎コンファレンスセンター(愛知)
    • 招待講演
  • [学会発表] Color sensitivity of light-induced body color change in larval zebrafish

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kojima
    • 学会等名
      FASEB Summer Research Conference: The Biology and Chemistry of Vision
    • 発表場所
      Steamboat Springs, U.S.A.
  • [学会発表] Functional analysis of mammalian UV photoreceptor OPN5

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kojima
    • 学会等名
      Neuro2013
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都)
  • [学会発表] ニホンザルOpn5遺伝子の発現パターン

    • 著者名/発表者名
      小島大輔
    • 学会等名
      日本動物学会第84回大会
    • 発表場所
      岡山大学津島キャンパス(岡山)
  • [図書] Vertebrate Photoreceptors: Functional Molecular Bases2014

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kojima
    • 総ページ数
      15ページ(分担執筆)
    • 出版者
      Springer Japan
  • [図書] 光と生命の事典2014

    • 著者名/発表者名
      小島大輔
    • 総ページ数
      印刷中(分担執筆)
    • 出版者
      朝倉書店
  • [図書] 研究者が教える動物実験 第1巻「感覚」2014

    • 著者名/発表者名
      小島大輔
    • 総ページ数
      印刷中(分担執筆)
    • 出版者
      共立出版
  • [備考] 東京大学・大学院理学系研究科・生物科学専攻・深田研究室

    • URL

      http://www.biochem.s.u-tokyo.ac.jp/fukada-lab/index-j.html

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公開日: 2015-05-28  

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