概日時計を明暗サイクルに同調させる「概日光受容」は、様々な動物において見出される普遍的な機能である。哺乳類の概日光受容は網膜の光感受性神経節細胞ipRGCが担うが、私共のこれまでの研究成果から、ipRGCの光受容蛋白質OPN4が新たなシグナル伝達経路を駆動する可能性が浮かび上がってきた。本年度は、このシグナル経路が実際にipRGCにおいて光活性化されるかどうかを検証するため、マウスOpn4遺伝子プロモーター制御とCre/loxPシステムを利用して、発光レポータ遺伝子をipRGC特異的に発現するトランスジェニックマウスの作成を試みた。この発光レポータは、上述のシグナル経路の二次メッセンジャーを検出する。その結果、複数のマウス系統を樹立することに成功したが、いずれもレポータ遺伝子の発現量が低く、この経路の活性化を検出するには不十分であることがわかった。この問題を解決するため、新たなマウス系統の作製に着手した。一方、前年度までの研究によりこの経路は、既知のOPN4シグナリング経路とは異なる三量体G蛋白質を介することが示唆されている。本年度は、上述のCre/loxPシステムを利用することにより、このG蛋白質サブタイプのαサブユニット遺伝子をipRGC特異的にノックアウトする組換えマウスの作製に成功した。今後このマウスの行動解析を進めることにより、このシグナル伝達経路の概日光受容もおける役割を個体レベルで明らかにできると期待される。
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