研究課題
本研究代表者は、脳の構造が簡単で神経細胞の数が少なく、しかし、脳高次機能の研究に最適な動物である軟体動物腹足類のヨーロッパモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)を用いて、その脳高次機能変化の一つである「学習記憶機構」について研究を続けてきている。モノアラガイにおいて、学習記憶機構の鍵を握るキー・ニューロン(Cerebral Giant Cell:CGC)を以前に同定している。このCGC単一神経細胞をシナプス前細胞として、それに続くそしゃく運動を司どるCPG(central pattern generator)の神経細胞をシナプス後細胞とした回路で、シナプスの長期変化が起こることは、これまでにわかっている。そこでわれわれは多くの動物で示されている通り、学習時にシナプス前細胞内でcAMP濃度が上昇するものと仮定した。学習記憶機構を人為的にミミックするために、シナプス前側のCGC単一神経細胞内でcAMP濃度を上昇させてみた。その結果、学習記憶の生理学的応答を再現できることがわかった。しかしながら、cAMP濃度を人為的に上昇させているだけであって、本当に学習に伴ってこのシナプス前細胞でcAMP濃度が上昇するのかはわからなかった。そこで、「学習時に脳内の単一神経細胞内でcAMP濃度は本当に上昇するのか?」この問題をモノアラガイのCGC単一神経細胞を用いて検証した。測定方法としてはcAMPセンサータンパク質を適用した。しかしながら、このセンサータンパク質の応答はin vitroでは検出できたものの、in vivoすなわちCGC単一神経細胞では検出できなかった。そこで、cAMPの抗体を用いる方法を急遽取り入れ、免疫組織化学法によってcAMP濃度上昇を確認することがでできた。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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10.1139/cjz-2012-0292