研究概要 |
洞窟など地底湖に生息する生物(主に魚類や甲殻類)のほとんどは、眼が退化している。しかしながら、それらの生物より遥かに長い時代を暗黒世界に生きる深海生物は、なぜ眼が退化していないのであろう?暗黒世界深海に生きる生物は、何色を認識できるのであろうか? 【初期候補ヤマトコブシカジカ】ヤマトコブシカジカ(Malacocottus gibber)は、水深200~1,740mの深海に生息する。これら個体を用いて本実験を行った。平成24年度に行った色彩及び弁別学習実験において、呈示された刺激の色と明度情報いずれかを弁別していたのかを同定するため、負刺激と正刺激を同時に呈示し観察する移調試験を行った。実験には、8色(紫・青・緑・黄・橙・赤・白・(黒は弁別のみ)に着色したシリコン製の円柱体を用いた。実験の結果、明視野では、深海では吸収される色である赤、橙色の順で正刺激とする傾向が高かった。一方、暗黒状況下においては、赤と橙がほぼ同率、次に黄色の順で正刺激とする傾向が観察された。 【第2候補深海イソギンチャク】イソギンチャクは地球上で最も原始的な生き物の一つである。彼らは特別な受光器官、いわゆる目のような器官は持っていない。深海のイソギンチャクは、光を認識できるのだろうか?実験には、ヤマトコブシカジカと同じ生息域で捕獲された深海イソギンチャクCribrinopsis sp.を用いた。ライト照射実験には、青470nm及び赤630nmの光源を用い、光に対してどのように反応するのか、形状の観察を行った。その結果、青色ライト照射時は、即座に、口盤の膨張と胴体の垂直方向の収縮が生じることが分かった。一方、赤色のライト下では、殆ど形体に変化は認められなかった。 以上2つの実験から、深海生物は、暗闇において、色及び光の波長の違いを認識できることが示唆された。
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