研究課題/領域番号 |
24657059
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
牧 雅之 東北大学, 学術資源研究公開センター, 教授 (60263985)
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研究分担者 |
山城 考 徳島大学, ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス部, 准教授 (50380126)
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キーワード | 遺伝的多様性 |
研究概要 |
風穴植物は,風穴から流れ出る冷やされた空気のために,低地でありながら,本来は本州の亜高山や北海道などの寒冷地に分布する植物が,風穴付近に限って隔離されて分布する植物のことである.これらの植物は,最終氷期において日本列島が現在よりも冷涼な完了であった際に広く分布していた寒冷地の植物が,その後の温暖化に伴って,風穴付近に取り残されたものであるという仮説が提唱されている.本課題では,現在の風穴地が寒冷地植物のレフュージアになっているという前提のもとに,風穴集団・本州の亜高山帯の集団・北海道の集団の遺伝的分化,遺伝的多様性について,分子系統学的解析を行い,風穴付近に存在する集団のレフュージアとしての特性を明らかにすることを目的としている. 本年度は,ウサギシダ,エゾヒョウタンボク,オオタカネバラについて,本州の風穴地における集団のサンプリングをさらに追加したほか,北海道の広い範囲にわたって,複数の集団からサンプリングを行った.またエゾヒョウタンボクの亜高山集団と見なされるスルガヒョウタンボクの集団を本州中部からサンプリングした. これらのサンプルを用いて,エゾヒョウタンボクとオオタカネバラについては葉緑体DNA変異に基づく,分子系統地理学的解析を行った.その結果,本州の風穴地には固有のハプロタイプが散見されるが,多くの場合には北海道の集団や亜高山の集団と共通のハプロタイプが存在し,風穴植物が遺伝的に分化しているという強い証拠は得られなかった.この理由としては,葉緑体DNAの進化速度が遅いために,地理的な隔離が生じてから,変異が蓄積するのに十分な時間が経過していない可能性があげられる.今後は,より進化速度が速い核遺伝子マーカーを用いた解析を行う必要があると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集団のサンプリングについては,当初予定していた通りに進んでいる.また,エゾヒョウタンボクとオオタカネバラについては,葉緑体DNA変異による解析がおおよそ完了した.
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今後の研究の推進方策 |
サンプリングについては,若干の漏れがあるものの,おおよそ完了しているので,補足的な収集で済む予定である.また,核遺伝子マーカーについては,次世代シーケンサーによるゲノムリーディングまでは完了しているので,このデータをもとにプライマーを設計する.DNAの抽出が済んでいる集団が大部分なので,プライマーを設計後はすぐにジェノタイピングを行うことが可能である.
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次年度の研究費の使用計画 |
核マイクロサテライトマーカーのプライマー発注を平成26年度に持ち越したため.ウサギシダの解析の一部を平成26年度に持ち越したため, 本年度は,核マイクロサテライトマーカーのプライマー発注を行い,ジェノタイピングを行う.また,ウサギシダの解析も完了させる予定で,これらの解析に必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である.
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