風穴は,冬の冷たい空気が夏でも吹き出す特殊な環境で,その周囲の環境に比べて1年を通して低い温度が保たれており,特異な植物種が見られる.それらの多くは本来,より高緯度または高標高に分布する. このような風穴地特異な植物種の由来としては,最終氷期に現在より広く分布していた寒冷地の植物が,その後の温暖化に際して,風穴地の特異な環境に限って遺存的に生育していると一般的に考えられている. 本研究では,風穴地に特有な植物の集団遺伝分化を明らかにして,その由来を検討した.風穴地集団と高緯度・高標高集団では遺伝的分化が見られず,風穴地が寒冷地の植物のレフュージアになっているという仮説は支持されなかった.
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