研究課題/領域番号 |
24657060
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
横山 亜紀子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30466601)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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キーワード | 藻類 / プロティスト |
研究概要 |
真核生物には,環境配列のみで存在が確認されている形態未知な生物の存在が多数報告されている。これらの生物は細胞微小,低生育密度,高速運動性,あるいは形態的には識別が困難な隠蔽種のために記載が遅れていると予測されている。その中でも難培養や固定困難といった性質は,実体把握を困難とする大きな要因となっている。これを解決する手段のひとつとして,培養や固定などを行わずに生物観察したのちに,遺伝情報を獲得することが考えられる。本研究では,ナノプランクトンなどの真核生物を対象とし,光学顕微鏡ベースで細胞運動を含めた形態的特徴を高速ビデオで記録した後,同一細胞から塩基配列を取得し,形態と遺伝情報が完備された,詳細で高効率かつ高速な生物プロファイリング法の確立に挑んでいる。形態プロファイリング法の確立のため,まずは,すでに確保している藻類の既存培養株を用いて実験を行った。この予備実験の中で,クロララクニオン藻の既知種や新規培養株で遊走細胞の鞭毛運動を高速ビデオで観察した結果,観察したすべての株で同様の鞭毛打を行うことが確認され,この運動様式が分類群内で保存されているものであることがわかった。さらに,真核藻類捕食性プロティストの未記載種の培養株の捕食過程での鞭毛運動観察などにも取り組んだ。しかし,細胞径が小さい高速遊泳生物の単一細胞を,観察のために狭い視野に閉じ込め,細胞破裂させずに,塩基配列獲得のための単離を行うには,観察チャンバーのさらなる改良が必要であることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養株を用いて,高速ビデオを使用して,これまで観察されていなかった新しい細胞運動を観察するという点については,当初の予定どおり達成できたといえる。ただし,高速で遊泳する微細な細胞を効率的に観察するにはさらにチャンバーを改良する必要があり,これらの改良を行ってから,本研究の最終目標である野外採集物からの細胞単離・観察・塩基配列取得を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
単一細胞を効率的に観察エリアに移動し,水分蒸発することなく観察できるように観察チャンバーの改良を早急に実施する。改良したチャンバーを用いて,野外採集物から新規生物や形態情報と塩基配列情報が完備されていない既知生物を探索し,細胞単離・観察・塩基配列の取得を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
野外採集と研究成果報告のための学会参加に必要な旅費および,採集物を保存する容器や細胞観察に必要な観察器具および,塩基配列決定に必要な酵素や試薬類などの消耗品費に使用する。
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