研究課題/領域番号 |
24657061
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
坂巻 祥孝 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (20315401)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ハマキガ科 / ホソガ科 / キバガ上科 / 鱗粉の脱落 / 遺伝的基盤 / 左右非対称 / 斑紋変異の定量化 |
研究概要 |
現在までのところ未展翅で翅の左右のどちらが上かが分かる標本は約30種集めた. それらのうち,5個体以上の未展翅,展翅標本の両者がそろっているものは約20種.その多くが未展翅(静止時の状態)で種ごとに上になる翅が右か左かに偏っていた(左上:チャノコカクモンハマキAdoxophyes honmai,トビモンコハマキ Neocalyptis congruentana,右上:ウスコカクモンハマキAdoxophyes dubia,ミツボシキバガ科の一種Autosticha sp.). ただし,右上と左上が等しい頻度で混ざる種もあった(サクラキバガ亜科の一種Anacampsis blattariella,リンゴコカクモンハマキAdoxophyes orana). 標本写真撮影後,左右の翅斑紋をパソコン上で重ね合わせる作業をする中で,キバガ上科,ハマキガ科の前翅の後縁部で左右変異が多いことが分かった.また,左右変異がでやすい部分は静止時に左右の翅が重なり合う部分であることも分かった.ただし,キバガ科のヒメキマダラキバガMonochroa cleodoroides. およびウスアトベリキバガ Hypatima spathotaなどでは重なり合う部分の周辺にも斑紋の左右変異が認められた.この傾向から見出されると予測されるパターンの探索に力を入れる.ただし,例外的であるが,前翅が左右で重なり合わないホソガ科でも,前翅後縁部の斑紋が左右非対称な種が2種(Acrocercops spp.)が認められた. この左右の変異が遺伝的に決定しているものか,あるいは発生過程で可塑的に生じるものか,あるいは成虫になってからわずかに鱗片が脱落して生じるものかは現段階では不明である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生の蛾類の未展翅標本については,キバガ上科,ハマキガ科について一年目で十分な種数,個体数が完備できたと考えている.また,各種の標本写真の撮影,左右非対称性のある種をスクリーニングするためのプレパラート作製および写真撮影もおおむね終わっている.ただし,これらの標本の斑紋パターンの差異の定量化についてはいくつかの試行はしているものの,従来法(一つの目的斑紋の重心点位置,および面積)以外には,画期的な定量化法が見つかっていない.また,幾何学的形態測定法による翅形の分析については未着手である.
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今後の研究の推進方策 |
今後はメイガ科,ヤガ科などのその他のグループでも左右非対称性の探索をしながら,とくに室内で大量飼育できる種に絞って,飼育個体群間での左右の変異の違い(遺伝的基盤であることの証明),および成虫羽化後日数による左右非対称性の程度の違い(鱗片の脱落がかかわることの証明)を,斑紋変異を定量化することで行っていく予定である.色彩豊かな鱗翅目の翅の斑紋変異をどのように定量化するかが今後の課題と言える.また,昨年未着手の翅形態自体の左右非対称性に関する幾何学的形態分析についても,大量飼育できる種について昨年同様,写真撮影とプレパラート作製を行って検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
プレパラート作製用のガラス器具および標本箱について急いで購入し,ヤガ科および室内飼育した蛾類の左右非対称性の検討を急ぐ.また,ハマキガ科およびキバガ上科標本については,昨年関東地域から多数を得たが,本年度は奄美大島に標本採集の研究協力者を得たので,旅費を削って,謝金を支出する.
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