研究課題/領域番号 |
24657063
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
林 文男 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (40212154)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 昆虫 / 交尾行動 / 交尾器の進化 |
研究概要 |
昆虫類のオスの交尾器は,一般的には複雑で,複数の特殊な形状をした突起を有することが多い.これらの突起の構造については外観から観察することができるが,それぞれの突起の機能については交尾行動を観察しただけではわからない.そこで,これらのオスの交尾器のそれぞれの突起が,交尾の際にメスの腹部のどこに付着しているかを明らかにするために,蛍光ビーズ(細菌サイズの微細な蛍光人工粒子)を用いた機能解析を行った. 初年度は,これらの手法の確立とそれが機能の解明に有効かどうかのチェックを行うことが第一の目的である.研究材料として用いた昆虫は,本年度は,カマキリ類とヘビトンボ類である.カマキリ類については,外部形態の観察から,左右非対称な形態をなし,3対の突起を有する.野外で採集して来たオオカマキリのオス交尾器のそれぞれの突起に蛍光ビーズを塗布し,メスと室内飼育下で交尾をさせた後,そのメスを麻酔して腹部のどの位置に蛍光が観察されるかを特定した.その結果,メスの腹部側面の開口部に蛍光が観察され,オスの突起の一つがここにくることが明らかとなった.また,ヘビトンボについては,幼虫から飼育して成虫を羽化させ,その雌雄を実験に用いた.オスの交尾器の一部に蛍光ビーズを塗布して,オオカマキリと同様に,交尾後のメスを観察したところ,産卵管の上部側面に蛍光が確認された.このように,蛍光ビーズを用いたオスの交尾器の機能解明は,客観的にオスの交尾器の各部の機能を明らかにする上で有効であることが確かめられた.次年度には,多数の交尾対を作成し,交尾時のオスの交尾器の位置などが,交尾成功度にどれくらい影響するかを明らかにする予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光ビーズを用いて,それがオスの交尾器からメスの腹部のどこに移動したかを蛍光顕微鏡および蛍光実体顕微鏡を用いて追跡することにより,昆虫類のオスの交尾器の機能とそれに付随する交尾器の進化にかかわる選択圧をさぐる研究であり,いずれも初めての試みである.今年度は,予定通り,新しく機材を購入し,かつ,既存の機材を組み合わせ,蛍光ビーズを用いた研究手法を完成させた.昆虫の選定種がカマキリ類とヘビトンボ類に限られてしまったが,研究成果(蛍光写真の撮影)を得ることができ,ほぼ予定通りの研究の進展である.
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今後の研究の推進方策 |
今後,さらに多くの種の昆虫類で,蛍光ビーズを用いた交尾器の機能解明を行うとともに,いくつかの種については,オスの交尾機器のメスへの付着状況と交尾成功率の関係を明らかにする予定である.とくに後者は,交尾器の進化に関する選択圧の検出という点で画期的な成果になると期待される.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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