研究課題/領域番号 |
24657066
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
西海 功 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (90290866)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 韓国 / 系統地理学 / 種分化 |
研究概要 |
申請者は南北に長い日本列島の存在が東アジアの鳥類の種多様性を生み出したという仮説を立てた。つまり、多くの鳥類で、日本列島での種分化とその後の大陸への分布拡大が起こったと考えている。この仮説をDNA による生物系統地理学的な分析によって検証することが本研究の目的である。 2012年度は、既存で少数個体の大陸産サンプルがある12 種(ヤマシギ、アリスイ、ビンズイ、キセキレイ、イワヒバリ、オオルリ、ヤブサメ、センダイムシクイ、ゴジュウカラ、カワラヒワ、シメ、オナガ)について、COI 領域の分析をおこなった。Hebert et al. (2004) のPCR プライマーセット(BirdF1, BirdF2)を用いてターゲット領域を含む749bp のCOI 領域を増幅し、Applied Biosystems 3500xLを用いて両側からシークエンスして解析した。既にDNA バーコーディングで登録済みの国内集団の塩基配列と比較し、分子系統樹を作成した。また、国内外の60 個体以上の既存サンプルがある種のうち6 種(ヒヨドリ、オオヨシキリ、メジロ、シジュウカラ、ヤマガラ、エナガ)について上記と同様にCOI 領域の分析をおこない、系統地理学的分析のデータを集めた。 野外調査については、中国北東部での捕獲調査によってサンプルを補うことを計画していたが、おそらく尖閣諸島をめぐる問題などによって中国の共同研究者との連絡が取れなくなったため断念し、代わりに、大陸と日本列島の間に位置する対馬での捕獲調査をおこなった。16種105個体の繁殖個体を捕獲し、DNA分析用の血液の採取と形態分析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の計画は、既存のDNA標本を用いてミトコンドリアのCOI領域を読み、系統関係や系統地理学的関係を調べると共に野外調査で中国東北部と韓国の鳥類のDNAサンプルを採取して分析に加え、より正確に系統地理学的関係を調べることで、日本列島が起源となった鳥類種を探すことを目標にしている。既存DNA標本の分析は順調に進んでおり、野外調査に関しては、中国東北部が実現しそうにないが、韓国の調査は2013年5月に実施できる運びとなり、また中国の代わりに大陸と日本列島の間をつなぐ役割をしている対馬での調査がおこなわれた。これらは総合的に見ると当初の計画通りに進んでいるとまではいえないが、ほぼ遜色なく順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の調査結果を基に5月におこなう韓国での野外調査でヒヨドリ、シジュウカラ、ヤマガラ、エナガなどのサンプルを補いながらミトコンドリアDNAのCOI領域の分析を進め、また、系統樹のブートストラップ値が低かった種に関しては、同じミトコンドリアDNAのチトクロームbやより進化速度の速いCRの分析をおこなって、解析精度を上げて、NCPA解析をおこなう。 ①既存サンプルのmtDNA 分子系統解析:チトクロームbとCR の分析をおこなう。Sorenson et al. (1999)のPCRプライマーを用いて、1000bp 前後の塩基配列を読み、分子系統樹を作成する。 ②韓国での野外調査とDNA 解析:分子系統対象の24 種およびNCPA 対象の12 種の計36 種について捕獲調査をおこない、COI 領域の分析をおこなう。特に24 年度のNCPA によって、サンプリング地点不十分の結果が出た種について重点的に捕獲を試みる。 ③12 種についてのNCPA:国内外の50 個体以上の既存サンプルがある種のうち残りの6 種(カッコウ、オオアカゲラ、モズ、ウグイス、ホオジロ、スズメ)についてCOI 領域の分析をおこない、NCPA をおこなう。 ④成果発表:対象種36 種のうち、日本起源が示唆される種がどれほどいるのかを評価し、その結果を学会大会および国際誌で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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