研究課題
狂牛病やクロイツフェルトヤコブ病などで知られるプリオンは自己増殖して伝播する異常型タンパク質コンフォーメーションである。そのようなタンパク質性の感染因子と定義されるプリオンの実体はアミロイドである。すなわちプリオンはアミロイドの一種と言える。ここで、アルツハイマー病など典型的なアミロイド病では一般に伝播性はないとされている。つまり、プリオンと一般的なアミロイドとで違う点は何かと言えば、感染性、言い換えれば増殖・伝播の度合いがプリオンでは高いことにある。そこで本研究では、出芽酵母を用いて、伝播しないアミロイドと伝播するアミロイド(プリオン)の差異の分子機構を調べるとともに、非伝播性アミロイドの「プリオン化」を実現することでプリオンの本質を理解することを目的とした。これまでに、出芽酵母にて伝播する酵母プリオンタンパク質の一つSup35と伝播しないポリグルタミンにGFPを融合させた系をモデルとして、両者のちがいを追究している。その結果、Sup35では細胞内にできるアミロイド凝集が成長と分断を繰り返し、あるサイズを維持して親細胞から娘細胞への伝播が行われるのに対し、ポリグルタミンではアミロイド凝集が大きくなる方向に平衡が偏り、それによって娘細胞への伝播能が弱いことが判明した。また、ポリグルタミンの隣接領域につなぐことで伝播能をもつペプチド10種類程度を取得した。プリオンを人為的に作ることによりプリオン伝播の分子機構の一端が解明できたと言える。
1: 当初の計画以上に進展している
伝播するアミロイドであるプリオンと伝播しないアミロイドであるポリグルタミンの細胞内での動態を生物物理的な手法で明らかにするとともに、さらにはポリグルタミンに付加することで伝播するようになるペプチドまで取得したので、当初の計画以上に進展したと考えた。
ポリグルタミンに付加することで伝播するようになるペプチドがどのような分子機構で伝播しないアミロイドを伝播するようにしたのか解析する。
研究が未達成のため、未使用額も次年度の計画のために使用する。出芽酵母の分子生物学的な解析に必要な培地、試薬など。蛍光相関分光法に必要な試薬類。プラスチック容器、ピペット、ガラス器具。
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