前年度に一番の問題点であった液体窒素冷却時にガスケットを保持するクライオピンのXYZステージ部の凍結については,当初ステージにヒーターを設置して保温する方針で改良を試みたが,最終的にはステージを使用しないクライオピンのマウント法を開発して対応することが出来た.同時にこの改良によって装置全体をそのまま蛍光測圧器に搭載出来るようになり,凍結直前のアンビルセル内の圧力をモニターすることも容易になった.また,凍結後液体窒素中から取り出してX線を照射する際,X線装置の低温窒素ガスの吹付による低温維持のため,クライオピンのガスケット保持部もマコール製のピンに改良を行った. 高圧凍結のテストは,我々がこれまで室温での高圧構造解析で蓄積しているShewanella属の3-イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ (IPMDH)および大腸菌のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)で実施した.結晶母液をそのまま圧力媒体として高圧凍結のテストを実施したが,成功率が低かったため,一端結晶周辺の母液を完全に除去して別の液体を圧力媒体とすることを試みた.数種類のフロリナートやフォンブリンオイル等をテストした所,高粘度のパラトンが最適であることが分かった. これらの条件で,同じバッチの結晶を常圧で凍結したものと,本手法で高圧凍結したものと比較すると,格子定数は 2~3%縮んでおり,高圧による圧縮の効果は保ったままで凍結出来ていると考えられる.但し,多くの場合,高圧凍結結晶のモザイク角が約2倍に悪化しており,凍結方法にはさらなる改善が必要である.
|