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2012 年度 実施状況報告書

出芽酵母を用いたParkinーPINK1誘導型マイトファジーの分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24657072
研究機関名古屋大学

研究代表者

遠藤 斗志也  名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70152014)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード酵母 / ミトコンドリア / PINK1 / Parkin / パーキンソン病
研究概要

ガラクトースによる発現誘導型プロモーター(GAL1プロモーター)を用いて,酵母細胞内でOM45-PINK1(PINK1に酵母外膜挿入シグナルを付加した融合タンパク質)の発現を誘導できる株を作製した。OM45-PINK1は,予想通り,ミトコンドリア外膜に安定に局在した。OM45-PINK1の発現自体が酵母の増殖にやや阻害効果を示し,ミトコンドリアの形態異常(凝集)と前駆体の若干の蓄積(おそらくミトコンドリア外膜のトランスロケータTOM40複合体の機能阻害が生じている)を引き起こした。以上の効果はPINK1のキナーゼ活性に依存しなかった(キナーゼ活性の欠失変異体でも同様の効果が観察された)。OM45-PINK1を発現せずにParkinを発現すると,Parkinはサイトゾルに一様に分布した。OM45-PINK1発現時にParkinを共発現すると,Parkinはミトコンドリアに局在し,この局在はPINK1のキナーゼ活性に依存した。またOM45-PINK1とParkinを共発現すると,酵母細胞の増殖は著しく阻害され,この阻害はPINK1のキナーゼ活性に依存した。しかし前駆体の蓄積やミトコンドリアの凝集はParkinの共発現の有無により大きく変わらなかった。以上の結果は,哺乳動物におけるPINK1によるParkinのミトコンドリアへのリクルートがこの二つの因子だけで,かつPINK1のリン酸化に依存して酵母細胞でも再現できることを示しており,PINK1-Parkinの機能を解析する上で有用な系であることが明らかになった。今後は,なぜPINK1-Parkinの共発現が酵母細胞の増殖を強く阻害するのかを解明する必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目的であった,酵母細胞内でOM45-PINK1とParkinを共発現することで,ParkinをPINK1のキナーゼ活性依存的にミトコンドリアへリクルートする系を確立すること,それに伴う基本的なキャラクタリゼーション(細胞増殖,ミトコンドリア形態,膜電位,前駆体の蓄積など)を行うことができた。酵母細胞にはPINK1,Parkinが存在しないので,逆にPINK1によるParkinのミトコンドリアへのリクルートがPINK1以外の因子を必要としないことを証明できたことになる。一方でなぜ酵母細胞内でPINK1がParkinをミトコンドリアにリクルートすると細胞増殖が強く阻害されるかについては大きな謎である。この解決が今後の課題となる。

今後の研究の推進方策

PINK1によるParkinのミトコンドリアへのリクルートがPINK1のキナーゼ活性に依存することを見いだしたが,PINK1の自己リン酸化,ParkinのPINK1依存性リン酸化などは確認できていない。Phos-tagを用いてこれらのリン酸化を確認することが重要である。また,OM45-PINK1とそのキナーゼ活性欠損体を発現したときのミトコンドリアタンパク質のリン酸化パターンの変化を調べることで,PINK1,Parkin以外のPINK1によるリン酸化のターゲットを検索したい。
哺乳動物細胞では、Parkinによるユビキチン化のターゲットのひとつとしてMfn1とMfn2が同定されている。そこで、Mfnの酵母ホモログであるFzo1がParkinによるユビキチン化のターゲットとなっているかを検討する。またOM45-PINK1とそのE3活性欠損体を発現したときのミトコンドリアタンパク質のユビキチン化パターンの変化を調べる(プロテアソームを阻害しておく)ことで,PINK1によるユビキチン化のターゲットを検索する。
なぜPINK1-Parkinの共発現が酵母細胞の増殖を強く阻害するのかを解明するために,可能性の一つであるFe-Sクラスター合成関係経路の阻害が起こっているかどうかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

経費については,主として試薬類とプラスチック器具の購入に充てる。すなわち試薬はPCR酵素,制限酵素,DNA精製キット,DNAシーケンスキットおよびオリゴDNA等の分子生物学実験に使用する試薬類,Yeast Extractなど酵母培養試薬類,SDS-PAGEやイムノブロッティングのためのゲル,PVDFメンブレン,2次抗体などの生化学実験に使用する試薬類である。プラスチック器具は,培養用の滅菌シャーレ,滅菌チューブのほか,培養用ディスポーザブルピペット,マイクロピペット用チップ,エッペンドルフチューブ,PCR用チューブとプレート,ろ過滅菌ユニットなどである。また「その他」として,成果発信のための論文投稿料も必要である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)

  • [学会発表] New perspective on biogenesis of mitochondrial proteins and lipids2012

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Endo
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会シンポジウム「New Paradigm of Organelle Biology and Physiology」
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121214-16
    • 招待講演
  • [学会発表] New perspective on import and maintenance of mitochondrial proteins2012

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Endo
    • 学会等名
      SFB594 3rd International Symposium Molecular Machines in Protein Folding and Translocation
    • 発表場所
      Munich, Germany
    • 年月日
      20120723-20120725
    • 招待講演
  • [学会発表] New insight into mitochondrial biogenesis

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Endo
    • 学会等名
      Organelle Homeostasis Research Center: Kick-off Symposium
    • 発表場所
      福岡
    • 招待講演
  • [学会発表] Organelle homeostasis research in Japan

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Endo
    • 学会等名
      Organelle Homeostasis Research Center: Workshop on Homeostasis Research
    • 発表場所
      福岡
    • 招待講演
  • [備考] 名古屋大学大学院理学研究科 物質理学専攻 生物化学研究室

    • URL

      http://biochem.chem.nagoya-u.ac.jp/index.html

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公開日: 2014-07-24  

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