研究課題/領域番号 |
24657073
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 正人 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90222158)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 葉緑体 / トランスロコン / 蛋白質輸送 / 蛋白質膜透過 / オルガネラ / 電子顕微鏡観察 / 端粒子解析 / 形質転換植物 |
研究概要 |
植物葉緑体の機能は、2千種類を超える核コードの葉緑体蛋白質が、細胞質ゾルで合成された後に、葉緑体を包む2重の膜、外包膜と内包膜のそれぞれに存在する蛋白質膜透過装置、TOCおよびTICによって、正しく認識され葉緑体内へ輸送配置される事で維持されている。これらの複合体はいずれも1メガダルトンを超える膜蛋白質超分子複合体である。これら複合体の構成因子については、外包膜TOCに関しては既に数年前に、内包膜TICに関しては最近我々のグループにより、その全容が明らかとなっているが、これらの複合体がいかに葉緑体蛋白質を特異的に膜を隔てて輸送しているか完全解明するためには複合体全体の構造情報が不可欠である。本研究では、取り扱いが難しいこれら巨大膜蛋白質超複合体を材料に、複合体大量調製法の確立から、リポソームやナノディスクへの組み込み等、電子顕微鏡による一分子解析およびX線結晶構造解析を手法としたさまざまなアプローチでの構造解析を目指した研究を推進する事を目標とした。初年度では、内包膜のTICに関して、モデル植物シロイヌナズナでは、その植物体の小ささからアフィニティ精製の手法を用いても、構造解析やInVitro解析に充分量の精製複合体を得る事は大変困難である事から、形質転換タバコを用いた精製系の確立を進めた。まず、そのTICを構成する因子のうち、葉緑体ゲノムにコードされている因子の遺伝子を単離した。そのC末相当部に、アフィニティ精製用のタグ配列を2つタンデムに付加した融合遺伝子を作製した。これを野生型タバコに形質転換し、すべての葉緑体ゲノム中の該当遺伝子座が、導入した融合遺伝子に置き換わった形質転換体を取得する事に成功した。さらに、この形質転換体を大量栽培し調製した葉緑体から、TIC複合体をアフィニティ精製する事に成功した。現在精製のスケールアップの検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TIC複合体の大量調製のために必須であったアフィニティ精製用の形質転換タバコのラインが確立できた事は大きな研究の進展であったと考えている。また、精製のパイロット実験により、実際にインタクトなTIC複合体を単離する事にも成功している。今後、予定通り精製のスケールアップおよび精製方法の最適化を薦める。
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今後の研究の推進方策 |
TIC複合体の精製のスケールアップとして、まず、栽培方法の最適化を行なう。すなわち、培地組成、光量、植え継ぎ方法、栽培期間等が最終的な収量に与える影響を調べる。次に、精製の出発材料の調製方法の検討を行なう。すなわち、植物体の破砕方法から、実際に界面活性剤による可溶化を行なう膜をどう調製するのが収率が上がるのか検討する。並行して、アフィニティ精製法の確立を行なう。精製のために、コンポーネントC末側に2種類のタグ配列が同定してある。このいずれのタグに対してどのような条件でアフィニティ精製するのが収率がもっとも上がるか検討する。これらのファインチューニングにより、TIC複合体の収量がもっとも良い条件を確立する。精製条件が確立されれば、まず精製表品について、ネガティブ染色電子顕微鏡画像、およびクライオ電顕画像を取得し、単粒子解析が可能か調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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