研究課題/領域番号 |
24657073
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 正人 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (90222158)
|
キーワード | タンパク質膜透過装置 / 葉緑体 / タンパク質輸送 / オルガネラ形成 / 生合成 / 植物 / タンパク質立体構造解析 / 電子顕微鏡観察 |
研究概要 |
植物葉緑体の持つ複雑な代謝機能は、2千種類を超える核コードの葉緑体蛋白質が、細胞質ゾルで合成された後に、葉緑体を包む2重の膜、外包膜と内包膜のそれぞれに存在する蛋白質膜透過装置、TOCおよびTICによって、正しく認識され葉緑体内へ輸送•配置される事で維持されている。これらの複合体はいずれも1メガダルトンを超える膜蛋白質超分子複合体である。これら複合体の構成因子については、外包膜TOCに関しては既に数年前に、内包膜TICに関しては最近我々のグループにより、その全容が明らかとなっているが、これらの複合体がいかに葉緑体蛋白質を特異的に膜を隔てて輸送しているか完全解明するためには複合体全体の構造情報が不可欠である。本研究では、取り扱いが難しいこれら巨大膜蛋白質超複合体を材料に、複合体大量調製法の確立から、リポソームやナノディスクへの組み込み等、将来的には電子顕微鏡による一分子解析およびX線結晶構造解析を手法としたさまざまなアプローチでの構造解析を目指した研究をスタートさせた。特に、これまでの精製法とはまったく異なる斬新なアイデアで、二つの包膜の複合体の一括精製を目指し、高解像度構造解析への足がかりを得るチャレンジを行うものである。すなわち、輸送される側の前駆体に精製用のタグを付加したものを使い、TOCとTIC輸送装置を、前駆体に結合した状態で一括精製しようとする試みである。本研究で得られた成果を発展させれば、将来的には、数十~数百キロオーダーでも入手が可能な、市販の植物体を用いることで、最終精製量を十分に確保する事が可能であると期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大量精製のための前駆体蛋白質として、トランジット配列の異なるもの、成熟体部分の長さの異なるもの、精製用タグ配列の異なるもの等、様々なコンストラクトを構築し、輸送中間体の形成および輸送装置の精製の予備実験を進めている。これまでに 比較的安定に多量に輸送装置が精製できる前駆体の選別が出来ている。また 輸送させる葉緑体を調製する植物体側としても、様々な葉緑体由来のものを複数準備し、輸送効率や、複合体精製効率を比較した。その結果、比較的安定に輸送装置を精製できる植物体を特定した。これらの設定した条件を元に、前駆体を結合した形の複合体を一定量、コンスタントに調製可能となった。しかしながら、それでも尚、精製量には限度があり、構造解析に供するレベルに達するには、精製効率の飛躍的上昇が必要と思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
精製効率の飛躍的上昇には、第一に輸送中間体の形成効率をアップさせる事が重要であると考える。当初は、輸送中間体は、葉緑体包膜上の輸送装置を既に飽和している(すなわち存在している輸送装置をすべて塞いでいる)と考えていた。しかし、精製されてくる輸送装置コンポーネントの量を出発材料中の因子の量とを比較してみると、実際は、この割合は10%以下程度と低い事が分かった。この事が何に由来するのかは、現時点では不明であるが、輸送実験系のバッファー組成などを変更し、また分子シャペロン等を添加する事で、輸送効率のアップを目指したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に 植物葉緑体包膜から蛋白質輸送装置を数十マイクログラムオーダーで単離精製し、電顕観察による構造解析に進む予定であったが、精製度は十分であるものの、精製量は依然として不十分である。そこで計画を変更し、平成26年5月末日まで精製条件の検討を続ける事とた。そのため、精製に携わる特任研究員の雇用を5月まで延長する事とし、未使用額は、その雇用費および若干の消耗品費に充てる。 特任研究員の雇用費 平成26年4月分および5月分で 64万円程度となる。若干の消耗品の追加購入のため残額を使用する。
|