蛋白質の細胞内輸送と膜透過は細胞構築原理の根幹に関わる重要な問題である。生命は進化の過程で、ごく少数の蛋白質膜透過装置トランスロコンを生み出してきた。原核生物型SECトランスロコンに関しては構造レベルの解析まで進んでいるが、真核生物型に関しては、小胞体SEC以外は再構成系や構造レベルの詳細な解析はほとんどない。我々は植物葉緑体内包膜特有の1メガダルトンのTICトランスロコンの精製と同定に成功した。またTICと連携し輸送モーターとして機能すると考えられる2メガダルトン複合体も完全同定している。本研究ではTICトランスロコンと輸送モーターを一つの超分子複合体として精製し、蛋白質膜透過反応の完全再構成系構築を行ない、膜透過反応に伴うトランスロコンと輸送モーターの構造ダイナミズムの情報を得る事を最終目標として、研究を進めてきた。タバコ形質転換体を用いる事で、それぞれを高度に精製する条件を確立する事ができた。さらに、精製の際の塩濃度を、微調整することで、2つの複合体を、超複合体として高度に精製できる条件が確立できた。今後、さらに収量を高める工夫が必要である事も分かった。
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