研究課題/領域番号 |
24657078
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
清水 伸隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (20450934)
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研究分担者 |
川崎 政人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (00342600)
五十嵐 教之 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (80300672)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | X線小角散乱 / 生体膜 |
研究概要 |
今年度は次年度に実施予定の時分割測定に向けて、試料及び装置の両面で準備を行った。試料では、X線小角散乱実験に適したGUVの調整条件検討を行い、そのようなGUVの小角散乱測定を行った。比較的均一サイズに処理されたGUVを濃縮し散乱データを得たが、3mg/mlまで濃縮することで十分なS/Nを持つ散乱強度が得られることが分かった。散乱ベクトルQで1.0(nm-1)付近、すなわち空間分解能6.2nm付近になだらかなピークが観測されたため、このピークを指標にGUVの構造変化を議論できると期待される。さらにBARドメインを持つタンパク質Arfatinを精製し、同様にX線小角散乱実験も行っている。GUVにArfaptinを添加した場合に有効な変化を観測するための条件出しを、蛍光顕微鏡を用いて現在行っており、確定した条件に基づいて、次年度に時分割小角散乱実験を遂行する。 一方、測定装置に関しては、試料周辺部を極力真空化するよう改造し、バックグラウンドとなる空気散乱を除去するために試料直前に直径1.4~1.6mmのピンホールを導入した。さらに、X線との干渉能が低い窓材の変更、ビームストッパーサイズの縮小化などを実施することで小角分解能が50nm向上した。導入したストップトフロー装置と高速検出器、及びX線シャッターを同期させて制御するために既存のパルスジェネレータを利用し、それら全てを制御するGUIシステムを作成した。その結果、0.01ミリ秒からの時間スケールを計測可能な装置を構築した。このシステムでは、ストップトフロー装置とパルスジェネレータの間で、互いの動作トリガーを入出力することが可能となっているため、最初の測定開始のみ手動で実施すれば、時分割測定を指定したサイクル分、全自動で実施することが可能となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Arfaptinの精製度合いの問題で、GUVとの混合条件が正確に定まっていないが、それ以外は順調に研究計画を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
Arfaptin添加に伴うGUVの構造変化を観測するために、蛍光顕微鏡及び紫外可視分光法を用いて必要な空間スケール、時間スケールを特定し、その上で時分割X線小角散乱測定を実施する。測定時間・空間スケールに応じて検出器や計測系を変更し、GUVの球形から管構造への変化から、BARドメイン蛋白質との相互作用領域で生じる局所的な変化まで階層的に観測し、それらの反応がどのようなメカニズムで進行するのか解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品としてはファイバー型の紫外可視分光光度計を導入すると共に、X線散乱測定に必要な器具、試薬などを整備する。得られた成果を発表するために国内の学会にて研究発表を行うことを計画している。
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