研究課題
H25年度は、GUVと脂質膜変形を起こすBARドメインとの相互作用に関して、前年度に評価した静的な測定条件、実験条件を基に、ストップトフロー装置を用いた時間分解測定を実施した。まず、昨年度から利用予定であったBARドメイン含有タンパク質Arfaptinの精製と試料調整に問題があり、Arfaptin単体のX線溶液散乱測定時に溶液中のタンパク質分子の凝集が観測された。これを取り除くための精製条件の見直し、溶液条件の精査を実施したが解消する事ができなかった。そこでArfaptinを諦め別のBARドメイン含有タンパク質FBP17とCIP4のF-BARドメインの発現系を構築し、両タンパク質を生成した。蛍光顕微鏡下でGUVにFBP17のF-BARドメインを添加したところ、顕微鏡視野下でGUVのチューブ化が確認された。また、X線溶液散乱でもF-BARドメイン単体に問題は無かった。そこで、両者を瞬時に攪拌後からのGUVの構造変化を観測するために、前年度に整備したストップトフロー装置を用いて時分割X線溶液散乱測定を実施した。測定はフォトンファクトリーのBL-6Aで実施し、波長1.5Å、カメラ長約1mとした。また、高速攪拌後の不感時間を0.1秒として、0.1秒露光で0.2秒の露光間隔、1秒露光で1.1秒の露光間隔、10秒露光で10.1秒の露光間隔などの条件で30~100枚の測定を実施して解析を行った。F-BARドメインに放射線損傷が観測されたため、バックグラウンドとして差し引くためには本測定と同様の条件でGUV非存在下で測定し、放射線損傷を同じ露光条件で評価する必要があった。そこで、水とF-BARドメインを含む溶液でストップトフロー装置による時分割測定を行ったうえで、GUVとF-BARドメインによる時分割測定を実施し、同じ露光時間帯の散乱強度データ同士を差し引くことで、GUVの変化を抽出した。その結果、散乱ベクトルQ~1.0(nm-1)付近のピーク形状が変化する様子を観測した。
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Journal of Synchrotron Radiation
巻: 20 ページ: 869-874
10.1107/S0909049513020827