研究概要 |
前年度の報告で述べたように、CagA結晶を10オングストローム分解能から3.1オングストローム分解能まで改善するまでの段階でsnapshotイメージを収集した結晶の数は1045個に達した。本年度は、これらのデータを統計的に処理するための基本となるExcelシート(結晶化条件、結晶の大きさ、ソーキング条件、変異体名、最大分解能等を含む)を全ての結晶について作成し、多段階でクライオプロテクタント溶液にソーキングする手法の有効性を統計的に分析した。その結果、多段階でクライオプロテクタント溶液にソーキングする方法では、単一のクライオプロテクタント溶液を用いた場合と比較して、最大分解能だけではなく、3.5オングストローム分解能以上の回折を生じる結晶の割合が大幅に向上(エリスリトール単独では10%→トレハロース+PEG1000では80%)していることが明らかとなった。また、変異体の種類によって結晶の質に有為な差が見られることも明らかとなった。これらの成果については学術論文誌に投稿中である(M. Senda et al., submitted)。 さらに、多段階で複数のクライオプロテクタントにソーキングする手法「multi-step soaking method」をいくつかのタンパク質結晶に適用し、結晶の質を改善することを試みた。その結果、タンパク質結晶Aについては、回折データの質が3.5オングストロームから2.1オングストローム分解能に、タンパク質結晶Bについては、最大分解能が1.20オングストローム分解能から1.05オングストローム分解能まで改善された。
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