昨年度に引き続き、ザゼンソウ群落地にて発熱中の肉穂花序からパーコール密度勾配法によりミトコンドリアを精製した。本年度においては、従来の精製方法を改変し、より短時間で高品質のミトコンドリアが得られる条件を見出した。得られたミトコンドリアは従来法により精製したものと比較し、高いCOX活性を有していることが判明した。この実験系は脱共役活性の評価系としても有用であると考えられた。また、ザゼンソウから調製したゲノムDNAにおける脱共役タンパク質をコードする遺伝子は、少なくとも2つ存在することが明らかとなった。膜貫通ドメインVにおいて、両遺伝子ともExonic splicing enhancerが存在していたが、一方の遺伝子においては、これに加え、Exonic splicing silencerも存在している可能性が示唆された。また、膜貫通ドメインVをコードする領域の近傍に位置するイントロン領域には、遺伝子変異が見出され、これらの領域が両遺伝子のスプライシングに影響を与えることが示唆された。また、本年度においては、UCPaの転写産物の発現について、特異的なプライマーを用いた定量的PCRにより、詳細に解析することができた。その結果、発熱性肉穂花序における同遺伝子の転写産物の発現量は、シアン耐性呼吸酵素遺伝子の発現と比較すると極めて低レベルであることが明らかとなった。また、非発熱性組織における同遺伝子の発現も発熱組織と同様に低いレベルであった。
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