研究課題/領域番号 |
24657086
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井筒 ゆみ 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20301921)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | アフリカツメガエル / 両生類の変態 / 幼生抗原 / 免疫 / 細胞死 / 皮膚 / T細胞 / タンパク質 |
研究概要 |
上皮は、全ての多細胞生物にとって、器官構造上必須の構造である。階層性をもって分化し、その三次元構造を完成させる。その際、様々な生体内分子が相互作用して機能していると考えられるが、個々の分子間の相互作用や生理的意義を直接的に解析する系がほとんど知られていない。 本研究は、モデル系として、水中生活から陸上生活への環境変化に伴い、脊椎動物の中で最も大規模な皮膚器官のリモデリングが起こる「両生類の変態現象」に着目して行われた。我々は、上皮組織に特異的に発現する新規のタンパク質を既に単離同定しているが、そのタンパク質 (オウロボロスと命名) は、成体の免疫細胞から抗原として認識され、ouro1とouro2の2種類存在する。共に変態期に発現が上昇し、組織リモデリングの際に消失する幼生皮膚において一過的に発現する。トランスジェニック動物において、異所的にオウロボロスタンパク質を過剰発現させる実験と、発現を抑制する2つの実験が過去に行われた。これら機能解析から、幼生組織を死に至らしめるには両方のオウロタンパク質の発現が必要であることが明らかとなった。2つは生体内でコンプレックスを作っていると示唆されているが、それがどのように抗原として免疫担当細胞から認識されるかは不明である。本年度はOuro2タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製に着手した。いくつか得られた陽性サンプルの中から、内在性の、即ちOuro1とコンプレックスを形成している時のOuro2を認識するクローンと、単独で発現させた状態のOuro2だけを認識するクローンが、別々に単離されてきた。これらを用いて内在性のタンパク質の組織特異性や、細胞内の局在を詳細に調べることが今年度の研究計画であったが、まだ単クローン化の途中であり、来年度行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者の発見した免疫系のターゲットとなり細胞死を誘導するタンパク質Ouroは、硬骨魚類や有尾両生類といった他の動物種においても、Ouro1とOuro2の「1対」で存在する。進化的にも保存されている遺伝子であることが考えられる。ツメガエル内在性の2つのOuroタンパク質は、2つ発現しないと機能せず、複合体を作っていることが予想される。内在性の抗原タンパクは、ペプチドとなり、抗原呈示細胞 (antigen presentation cell: APC) 上に発現している主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex : MHC classII)に呈示されて、T細胞に異物認識されることが既に示されている(Izutsu et al., 2000 Dev Biol 221:365)。Ouroタンパク質は、どのように免疫細胞に認識されるか、また、シグナルペプチドを持たないが細胞膜上あるいは細胞外に放出される可能性があるが、依然決着はついていない。そこで、今年度研究計画では、複合型タンパクを認識するモノクローナル抗体の作製を行うこととした。現在いくつかの陽性クローンが得られている段階で、タンクローン化にむけた限界希釈を進めているので、おおむね順調であると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画で述べたように、モノクローナル抗体の作成を進める。現在 2つある抗原タンパク質のうち、Ouro2のモノクローナル抗体の作成を進めているが、ouro1についても行う。抗原タンパク質オウロボロスは、細胞膜上あるいは細胞外に放出される可能性があるが、依然決着はついていない。そこで、まず、複合型タンパクのみを認識するクローンと、共発現させた場合を識別するクローンを選別する。それら作製したモノクローナル抗体を用いて、内在性タンパク質の細胞内局在および発現組織の確認を行う。その際、膜結合タンパクとの相互作用や、細胞外に運ぶことに関わるタンパクとの関わりについても解析する。抗原分子は他のタンパク質と相互作用して初めて機能するかを検証する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
モノクローナル抗体作成に関わる培養液などの試薬類
|