多細胞生物にとって、上皮組織の階層性は器官構造上必須の構造である。上皮の三次元構造を完成させるために、様々な生体内分子が相互作用して機能していると考えられるが、個々の分子間の相互作用や生理的意義を直接的に解析する系は、ほとんど知られていない。本研究では、モデル動物として無尾両生類を用いている。無尾両生類は、水中生活から陸上生活への環境変化に伴い、脊椎動物の中でも、最も大規模な皮膚器官のリモデリングが起こる。我々は、上皮組織に特異的に発現する新規のタンパク質 (オウロボロスと命名) を既に単離同定しており、免疫細胞から抗原として標的となることで、上皮組織のリモデリングが起こるという説を提唱している。オウロボロスタンパク質をコードする遺伝子には、ouro1、ouro2遺伝子の2種類が存在する。それらは共に変態期に発現が上昇し、組織リモデリングの際に消失する幼生尾部組織の表皮細胞において一過的に発現する。しかし、どのように抗原として免疫担当細胞から認識されるかは不明である。本年度は大腸菌に作らせたOuro1、Ouro2リコンビナントタンパク質を精製し、それらタンパク質に対するモノクローナル抗体の作製に着手した。陽性サンプルの中から、内在性の、即ち、Ouro1タンパク質とコンプレックスを形成している時のOuro2タンパク質を認識するクローンと、単独で発現させた状態のOuro2タンパク質のみを認識するクローンが別々に単離されてきた。しかし、これらクローンは途中で増殖を止めてしまい、十分な培養上清を回収することは出来なかった。従って、それぞれを単独、あるいは共にT細胞の培養系に加え、T細胞の反応を調べたところ、単独ではある程度の増殖反応を示すが、2つのタンパク質を同時に加えると、有意に強く反応が見られることが判った。
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