研究課題
膜輸送経路において、リソソームはエンドサイトーシス、オートファジー、貪食、分泌の各経路から生体高分子や細胞内小器官などを受け取って分解する。そのリソソームの動態を制御するキー分子が Rab7サブファミリーである。そこで、FRETセンサーを活用して、Rab7サブファミリーによる神経細胞での後期エンドソームとリソソーム動態の制御とその破綻の解析を行うことを目指して研究を進めた。昨年度開発したRab7センサーを使って、その活性動態を検討した。定常状態の共焦点顕微鏡による断層FRET画像から小胞ごとのRab7活性に有意なばらつきがあることがわかった。このことはGDP型のRab7が小胞膜上に相当数存在することを示唆する。そのことは、マクロピノサイトーシス過程のイメージングによりRab7が小胞膜にリクルートされた後、活性が上がることが観察されたことで裏付けられた。また、GTP-Rab7はGDP-Rab7とほぼ同程度の強さでRabGDIに結合する。この結果はGTP型のRab7が細胞質にも存在する可能性を意味する。通常、GDP-Rab7はGDIに結合して細胞質に存在する一方で、GTP-Rab7は小胞膜に存在し、小胞膜上のGDP-Rab7や細胞質のGTP-Rab7はあったとしても過渡的な存在で観測にかからない程度だと認識されている。これに対して、今回の実験から、Rab7はその4つの状態それぞれに観測可能な程度には分布するという4状態遷移モデルを提案する。マクロピノサイトーシスの過程でRab7はまずGDP結合型でマクロピノソームにリクルートされ、その成熟とともに次第に活性が上がっていく。多くの場合、最初の緩やかな上昇とそれに引き続く急激な上昇を経てプラトーに達するが、その上昇の切り替えが後期エンドソームからハイブリッドエンドソームへの切り替えとほぼ同じタイミングで起きる。
2: おおむね順調に進展している
課題の大きな目的であるRab7のFRETセンサーの開発を行い、定常状態にあるCOS7細胞、およびマクロピノサイトーシスを行っているCOS7細胞での活性動態を検討した。その結果、4状態遷移モデルという新たな枠組みの着想に至った。また、Rab7の活性変化のモードの切り替えがその表現型とつながる可能性を示唆するデータを得た
COS7細胞などを用いて上記の知見をさらに深めるとともに、神経細胞でのRab7による神経細胞での後期エンドソームとリソソーム動態(形成と細胞内配置)の制御とその破綻についての解析を行う予定である。
予定よりも少ない額で、おおむね順調な成果を挙げたことに加え、翌年度に謝金および物品費として相当額の支出が予想されるために、上記のような次年度使用額が生じた。翌年度に、謝金および物品費(試薬、プラスチック器具などの消耗品)として使用する
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Genes Cells
巻: 18 ページ: 1020-1031
10.1111/gtc.12097
PLoS One
巻: 8 ページ: e79689
10.1371/journal.pone.0079689