研究課題
Photoactive yellow protein(PYP)は光刺激をうけると、構造が変化して光信号を細胞に伝え、その後、元の状態に戻る(光反応サイクル)。光反応サイクル中で生成し、生理活性中間体であると考えられているM中間体は、部分的に蛋白質構造が変性した状態であると考えられており、蛋白質の変性状態のモデルとして研究されてきた。これまでの研究から、M中間体で構造変化が起こる部位をアゾベンゼンで架橋すると、その異性化状態(長さの違い)によって光反応サイクルの速度が大きく変化することが見出した。本研究では、アゾベンゼンによる架橋をPYPに導入し、L中間体からM中間体へと構造変化する際の遷移状態に関する知見を得ることを目指している。24年度には、L中間体からM中間体への遷移過程の解析にφ値解析を応用するため、数マイクロ秒の時間分解能を持つ過渡吸収スペクトルの測定系を構築した。25年度は実際に野生型PYPを用いて、光励起後の過渡スペクトルを測定した。SVD解析によって過渡吸収スペクトルを解析し、反応中間体の平衡定数を求めた。また、反応速度定数の温度依存性を測定し、光反応サイクルの各ステップの熱力学的パラメータを求めた。これらの知見から、PYPの光反応中間体、およびその間の遷移状態のエネルギー地形を得た。26年度は、アゾベンゼンのクロスリンクにより構造に部分的な摂動を加えたPYPを用いて、遷移状態に関する解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
PYPにシステイン残基を導入し、アゾベンゼンでクロスリンクすることは、分子設計、実験ともに方法が確立できてきている。また、マイクロ秒領域でのスペクトル解析が可能な測定系を構築し、熱力学パラメータを高精度に得ることができたので、本研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
次年度は光反応サイクル中での構造変化に関する解析を行うが、折りたたみ過程の解析にも拡張できるかどうかを検討する。
1月に米国のBiophysical Journal誌に論文が受理されたが、掲載料の請求額が確定したのが3月であった。3月14日に1,110ドルを送金したところ、16,683円の余剰となった。年度末が近かったので、無理に執行しなかった。試料調製のための試薬などの消耗品の購入と、成果発表のための旅費にあてる予定である。
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