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2012 年度 実施状況報告書

多粒子光トラップによる神経細胞の軸索伸長の制御とその特異性の起源の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24657105
研究機関九州大学

研究代表者

水野 大介  九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30452741)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード力学知覚
研究概要

細胞は周囲環境からの生化学信号だけでなく、力学的な性質(硬さや力)にも依存して自らの振る舞い(遊走、分化、成長、分裂)を決定する。しかしながら細胞が周囲環境の力学的性質を計測する(rigidity sensing)メカニズムは長く不明であった。最近研究代表者らは、生体媒質中に分散させたコロイド粒子の揺らぎと応答を同時観測(active/passiveマイクロレオロジー)、細胞は自らの硬さを物差しとして周囲環境の硬さを測っていることを見出した。
本研究では、神経細胞(ニューロン)が軸索を伸長させる際に、周囲環境の力学的要因が果たす役割を調べる。そのために脳内環境を模した柔らかいゲル中でニューロンを3次元培養しつつ、SLM(空間位相変調素子)を用いた多点同時光トラップにより周辺ゲル中に力学的・生化学的場を形成し、active/passiveマイクロレオロジーを行うことでこれらの制御された場が軸索の伸長の向きや速度に与える影響を観測する。
これを実現するために、本年度はactive/passiveマイクロレオロジー計測システムにfeedback機構を導入した。これにより大きな非平衡揺らぎを示す生体系において揺らぎと応答を安定的に同時観測することが可能になった。また、当該計測システムにSLM(位相変調素子)を用いた光トラップを導入し、複数の捕捉対象物を3次元空間中の任意の位置に配置することを可能とした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

active/passive マイクロレオロジー計測システムに1)生体系観測用オプション 2)feedback機構、3)多粒子補足用のSLMを導入すると、技術的な理由で非生体試料の観測がこれまでと同等な精度で実行できなくなった。これを避けるために、これまでの非生体試料計測用のactive/passive マイクロレオロジー計測システムとは別に、あらたに生体系観測用装置を1から作り上げており、その分当初の計画からやや遅れている。具体的には、多粒子の同時補足は可能となったが、高性能GPUを利用したリアルタイム制御が行えていない。

今後の研究の推進方策

上記の通り、平成24年度は当初、これまで所持している計測システムに生体系計測用オプションその他を組み込むことで、一つのシステムで生体系も非生体系も観測することを目指していた。しかしながら中途でこの方針を変更し、生体系計測専用システムを新たに1から組み上げることとした。その結果、本研究の遂行に当初の予定から若干の遅れが生じている。観測機器の性能向上と価格低下は目覚ましいことも考慮しつつ、並列処理に優れたNVIDIA社製GPU等の機器群の購入を延期して、平成25年度に購入することとした。平成24年度には新たな測定装置の作製を博士課程進学予定の学生を教育しつつ共同で遂行した。ことに当該学生は測定装置開発に加えてプログラミング能力にも優れていて、平成24年度には多粒子トラップのリアルタイム制御用のプログラミング言語を習得した。その結果平成25年度は当該学生を本研究遂行のための戦力として十分に期待できるために、研究進行速度を加速できる。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度には、NVIDIA社製GPUおよびstanford research社製feedback controller、その他オプトメカニクス部品(ダイクロイックミラー、対物レンズ、規格化差動増幅器、等)を購入して、生体系計測用active/passiveマイクロレオロジー計測装置を完成させる。これにより、本研究プロジェクト専用に測定装置を常時使用できるようになることから本研究の遂行を効率化できる。ことに平成24年度に引き続き、平成25年度も、科学技術研究費補助金「若手A」に採択されている別プロジェクトにおいて非生体系のactive/passiveマイクロレオロジー計測を行う必要がある。当該プロジェクトと測定装置を共有せねばならなかった平成24年度は、測定試料の変更のたびに数日がかりで装置の変更・光学系調整を要し、両方のプロジェクト遂行の障害となっていたが、この問題が解決される。また、共同で本研究を遂行する博士課程学生が研究成果発表するための旅費も支出する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件)

  • [雑誌論文] High-resolution microrheology in the pericellular matrix of prostate cancer cells2012

    • 著者名/発表者名
      N. Nijenhuis, D. Mizuno, J. A. E. Spaan, and C. F. Schmidt
    • 雑誌名

      J. Royal Society Interface

      巻: 9 ページ: 1733-1744

    • DOI

      10.1098/rsif.2011.0825

    • 査読あり
  • [学会発表] non-equilibrium, non-linear, non-Gauss and non-affine mechanical response of active cytoskeletons2013

    • 著者名/発表者名
      D. Mizuno
    • 学会等名
      the 31st SPP Congress- "Physics Linkfest: Spanning Science and Technology"
    • 発表場所
      University of San Carlos, Cebu City, Philippines
    • 年月日
      20131023-20131025
    • 招待講演
  • [学会発表] Levy statistics and dynamics in active cytoskeletons2013

    • 著者名/発表者名
      D. Mizuno
    • 学会等名
      Taiwan International Workshop on Biological Physics and Complex Systems (BioComplex-Taiwan-2013)
    • 発表場所
      National Taiwan University, Taipei,
    • 年月日
      20130717-20130720
    • 招待講演
  • [学会発表] 揺動散逸定理を破る非平衡揺らぎの時空間構造

    • 著者名/発表者名
      水野大介
    • 学会等名
      第 17 回久保記念シンポジウム「ゆらぎのなかの構造」
    • 発表場所
      東京、学士会館
    • 招待講演
  • [学会発表] 力生成する細胞(骨格)が示す非平衡揺らぎの統計分布

    • 著者名/発表者名
      水野大介
    • 学会等名
      第2回ソフトマター研究会
    • 発表場所
      福岡
    • 招待講演
  • [学会発表] Non-Gauss athermal fluctuations in active cytoskeletons

    • 著者名/発表者名
      D. Mizuno
    • 学会等名
      The 50th Annual Meeting of the BSJ, Symposium “Living matter far from equilibrium: from DNA to cytoskeletons and cells”
    • 発表場所
      名古屋
    • 招待講演
  • [学会発表] Non-Gauss a-thermal fluctuations in active cytoskeletons

    • 著者名/発表者名
      D. Mizuno
    • 学会等名
      Biological & Pharmaceutical Complex Fluids: New Trends in Characterizing Microstructure, Interactions & Properties An ECI Conference,
    • 発表場所
      Tomar, Portugal
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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