研究課題
真核細胞で作られる大半の膜タンパク質の膜組み込みと、全ての分泌タンパク質の膜透過は、小胞体にある『トランスロコン』と呼ばれるタンパク質膜透過チャネルによって行われる。小胞体トランスロコンにおけるポリペプチド鎖輸送の駆動機構、動きの制御、膜タンパク質の膜内配向形成機構、などを理解するために、本研究では、これらのトランスロコン機能を、無細胞系で再現し、ポリペプチド鎖一分子レベルで観測することによって、物理原理にせまることを目的とした。そのため、無細胞系での同調的機能解析系の整備に重点をおいた。(1) streptavidin binding peptide tag(SBP-tag)を有するポリペプチド鎖を無細胞系で合成し、トランスロコンの存在する粗面小胞体膜に移行させ、streptavidin との結合によって膜透過時の動きを一時的に抑制し、biotinによって同調的に透過を開始させることに成功した。(2)その動きは、膜脂質に存在するコレステロールによって多面的に大きく影響されることを見出した。(3)リボソームからポリペプチド鎖をピューロマイシンによって解離させることで同調的に透過を開始させる観察系も設定できた。その際、リボソームでの終止コドンの作用が下流の配列に依存することを見出した。 (4)整備された実験系を使って、ポリペプチド鎖の動きを秒単位の時間分解能で解析することが可能になった。これで、ポリペプチド鎖上に存在する2-3残基の正荷電アミノ酸残基によって動きが著しく遅くなること、疎水性アミノ酸残基はある閾値以上の数で協調的に作用すること、などを見出した。この実験系でのポリペプチド鎖の蛍光ラベルを検討した。最適化には至っていないが、一分子観察につながる成果を得た。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件)
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