研究課題/領域番号 |
24657108
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
川岸 郁朗 法政大学, 生命科学部, 教授 (80234037)
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研究分担者 |
川崎 一則 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (40356837)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 大腸菌 / 細胞膜 / 蛋白質 / 光学顕微鏡 / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
大腸菌内膜で巨大クラスターを形成する走化性受容体,内膜と外膜を貫く異物排出蛋白質複合体に焦点を当て,以下の解析を行った. (1) 走化性受容体のReAsHによる標識:まず,TC 配列導入受容体TarにFlAsH(TC 配列に結合すると緑色蛍光を発する)およびReAsH(TC 配列に結合すると赤色蛍光を発する)を反応させ,落射型蛍光顕微鏡により局在を観察した.GFP 融合体よりコンパクトなクラスターが観察でき,実際に使用できる目途が立った.ただし,標識効率は悪く,全反射型蛍光顕微鏡による解析は困難で,さらなる条件検討が必要である. (2)異物排出蛋白質複合体のReAsHによる標識:外膜チャネルTolCの細胞外ループ領域にCysまたはTC配列を導入したところ,いずれも機能に大きな影響はなかった.これらの変異TolCをSH基反応性蛍光試薬TexasRed maleimideまたはFlAsH/ReAsHで標識した.Cys置換TolCはTexasRed maleimideで標識され,TC配列挿入TolCはFlAsHで標識された.ところが,後者はReAsHでは標識されなかった.したがって,TC配列挿入位置等の検討が必要である. (3) 走化性受容体の細胞膜内クラスターの解析:全走化性受容体遺伝子を欠失した大腸菌変異株およびその株に受容体Tar(野生型またはTC 配列導入体)を過剰発現させた株を用いて,凍結割断レプリカ法により膜内粒子の電子顕微鏡観察を行った.その結果,いずれの株でも内膜のP面およびE面に膜内粒子のない領域(仮に「空き地」と呼ぶ)があること,TarまたはTar-TCを発現させると広い「空き地」が出現することが見出された.一方,全走化性受容体遺伝子失株にCys置換変異Tarシリーズを発現させ,化学架橋剤を作用させることで,受容体クラスターの構造を推定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
走化性受容体のReAsHによる標識には成功した.ただし,生細胞での標識効率はあまりよくないため,全反射型蛍光顕微鏡による解析には至っていない.しかし,凍結割断レプリカ用試料への標識は十分可能と考えている.大腸菌内膜の凍結割断レプリカ法による解析にも成功した.当初の予想とは異なり,走化性受容体遺伝子欠失株でも「空き地」(膜内粒子のない領域)が見られたが,受容体遺伝子過剰発現により明らかに大きな「空き地」が出現することが見出されたことから,今後の光学顕微鏡・電子顕微鏡統合解析への道筋が付けられた.一方,異物排出蛋白質複合体に関しては,ReAsH標識に成功しておらず,さらなる工夫が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の解析を継続・発展させる.また,以下の解析に着手する. (a) 走化性受容体のReAsH標識:標識法の改良および全反射型蛍光顕微鏡による解析を行う. (b) 走化性受容体クラスターの凍結割断レプリカ法による観察:すでに見出した「空き地」と走化性受容体クラスターの関係についてさまざまな変異株・DAB標識法を用いて,定量的に解析する. (c) 異物排出蛋白質複合体のReAsH標識:外膜チャネルTolCに関してはTC配列挿入部位の検討を行う.また,およ内膜トランスポーターAcrB,膜融合蛋白質AcrAにTC配列を導入し,ReAsHで標識する. (d) 内膜-外膜を貫く構造体の凍結割断レプリカ法による観察:外膜チャネルであるTolC は,さまざまな異物排出トランスポーターに共有される.そこで,この遺伝子を欠失した大腸菌変異株を用いて,凍結割断レプリカ法による電子顕微鏡観察を行い,野生株で見られたような内膜-外膜を貫く構造があるか(または数が減っているか)どうか調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き,菌株・プラスミドの構築,光学顕微鏡観察,電子顕微鏡観察のための試薬・器具類購入,電子顕微鏡利用課金,研究打合せ・成果発表旅費等に使用する.
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