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2013 年度 実施状況報告書

細菌膜蛋白質複合体の分子配列メカニズムに関する光学・電子顕微鏡複合解析

研究課題

研究課題/領域番号 24657108
研究機関法政大学

研究代表者

川岸 郁朗  法政大学, 生命科学部, 教授 (80234037)

研究分担者 川崎 一則  独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (40356837)
キーワード大腸菌 / 細胞膜 / 膜蛋白質 / 光学顕微鏡 / 電子顕微鏡
研究概要

大腸菌内膜で巨大クラスターを形成する走化性受容体に焦点を当て,以下の解析を行った.
1. 走化性受容体の蛍光観察:まず,走化性受容体TarとGFPの融合蛋白質を染色体上から発現する菌株を構築し,落射型蛍光顕微鏡を行った.同じ融合蛋白質をプラスミドから発現させた場合に比べ,免疫電子顕微鏡・間接蛍光抗体法などの結果とよく一致する局在を示した.これを,全反射型蛍光顕微鏡で観察し,受容体膜内動態を解析できる系を構築した.TC 配列導入受容体TarにFlAsH(TC 配列に結合すると緑色蛍光を発する)およびReAsH(TC 配列に結合すると赤色蛍光を発する)を反応させ,落射型蛍光顕微鏡により局在を観察した.GFP 融合体よりコンパクトなクラスターが観察できるようになった.そこで,電子顕微鏡観察のためにDAB標識を行っているが,まだ成功していない.また,前年度より引き続き標識効率の改善を試みているが,全反射型蛍光顕微鏡による解析ができるまでには至っていない.
2. 部位特異的架橋形成による受容体クラスターの解析:全走化性受容体遺伝子欠失株にCys置換変異受容体TarとTsrを発現させ,Tar-Tar, Tsr-TsrおよびTar-Tsr間架橋形成を検出した.この結果,異種受容体が混合クラスターを形成すること,リガンド存在下で異種受容体どうしの配置が変化することが示唆された.
3. 走化性受容体の細胞膜内クラスターの解析:野生型またTC融合Tarを全受容体欠損大腸菌株に発現させ,凍結割断レプリカ法により内膜の微細形態を観察した.コントロールと比較して,Tarを発現した細胞では,より大きな無粒子領域が見いだされた.これは膜貫通領域数の多い膜蛋白質分子が排除され,脂質分子と膜貫通領域数の少ない膜蛋白質分子のみが存在するものと推測される.今後は,Tarの局在場所と無粒子領域の関係を明らかにする必要がある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

走化性受容体のReAsHによる標識には成功した.ただし,生細胞での標識効率はあまりよくないため,全反射型蛍光顕微鏡による解析には至っていない.また,大腸菌内膜の凍結割断レプリカ法による解析には成功しているが,DAB標識には成功していない.当初の予想とは異なり,全走化性受容体遺伝子欠失株でも「空き地」(膜内粒子のない領域)が見られたが,その実体を把握するには至っていない.このような状況の中で,部位特異的架橋による受容体クラスターの解析を並行して進めている.これは,クラスター構造の推定のみならず,架橋によるクラスターの安定化などに利用できる可能性がある.一方,異物排出蛋白質複合体に関しては,ReAsH標識に成功しておらず,さらなる工夫が必要である.

今後の研究の推進方策

前年度の解析を継続・発展させる.また,以下の解析に着手する.
(a) 走化性受容体のReAsH標識:標識法の改良および全反射型蛍光顕微鏡による解析を行う.
(b) 走化性受容体のDAB標識:DAB標識法を確立すべく,条件検討を行う.
(c) 走化性受容体クラスターの凍結割断レプリカ法による観察:すでに見出した「空き地」と走化性受容体クラスターの関係についてさまざまな変異株・DAB標識法を用いて,定量的に解析する.
(d) 異物排出蛋白質複合体のReAsH標識:外膜チャネルTolCに関してはTC配列挿入部位の検討を行う.また,内膜トランスポーターAcrB,膜融合蛋白質AcrAにTC配列を導入し,ReAsHで標識する.
(e) 内膜-外膜を貫く構造体の凍結割断レプリカ法による観察:外膜チャネルであるTolC は,さまざまな異物排出トランスポーターに共有される.そこで,この遺伝子を欠失した大腸菌変異株を用いて,凍結割断レプリカ法による電子顕微鏡観察を行い,野生株で見られたような内膜-外膜を貫く構造があるか(または数が減っているか)どうか調べる.

次年度の研究費の使用計画

当初計画と比べて,ReAsH標識,DAB標識のプロトコル確立がやや遅れ,条件検討を行っている段階である.これに伴い,次の段階で使用する予定であった消耗品の購入を取りやめたため(川岸・川崎とも).
ReAsH標識,DAB標識のプロトコル確立を確立し,受容体の全反射型蛍光顕微鏡観察および凍結割断レプリカ法による顕微鏡観察を行う.その際,Cys置換変異体を化学架橋するなどの検討を行う.このような解析とそのためのプラスミド・菌株構築の消耗品費を購入する.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 大腸菌走化性受容体TarとヒスチジンキナーゼCheAの複合体形成の可視化2013

    • 著者名/発表者名
      小池 志津香,稲葉 岳彦,川岸 郁朗
    • 学会等名
      第96回日本細菌学会関東支部総会
    • 発表場所
      東京ドームホテル(東京都)
    • 年月日
      20131031-20131101
  • [学会発表] A quick-freezing replica study on morphological changes in the bacterial inner membrane induced by chemoreceptor expression2013

    • 著者名/発表者名
      Kazunori Kawasaki, Takehiko Inaba, Emiko Kobayashi, So-ichiro Nishiyama, Ikuro Kawagishi
    • 学会等名
      日本生物物理学会第51回年会
    • 発表場所
      京都国際会館(京都府)
    • 年月日
      20131028-20131030
  • [学会発表] 走化性レセプター Tarの発現による大腸菌内膜の構造変化─急速凍結レプリカ電子顕微鏡法による検討2013

    • 著者名/発表者名
      川崎一則,稲葉岳彦,小林恵美子,西山宗一郎,川岸郁朗
    • 学会等名
      第10回21世紀大腸菌研究会
    • 発表場所
      ラフォーレ修善寺(静岡県)
    • 年月日
      20130620-20130621

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公開日: 2015-05-28  

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