研究実績の概要 |
大腸菌内膜で巨大クラスターを形成する走化性受容体,内膜と外膜を貫く異物排出トランスポーター複合体に焦点を当て,以下の解析を行った. 1.走化性受容体の局在・膜内動態:まず,走化性受容体TarとGFPの融合蛋白質を染色体上から発現する菌株を用いて,受容体の局在・膜内動態およびそれに対するChe蛋白質の影響を解析した.その結果,受容体が内膜の細胞側面領域に挿入された後,徐々に大きなクラスターを形成し,極へと移行することが示唆された.ただし,この段階のどこでCheW, CheAと複合体を形成するのかに関しては今後の検討が必要である.さらに,前年度までに確立した手法を応用し,TCタグ融合コレラ菌CheAホモログをFlAsH標識し,エネルギー代謝低下時にのみ極に局在することを立証した.一方,GFP標識受容体を用いてDAB標識法の確立を目指したが,まだ成功には至っていない. 2.部位特異的架橋形成による受容体クラスターの解析:全走化性受容体遺伝子欠失株にCys置換変異受容体TarとTsrを発現させ,Tar-Tsr間架橋形成を検出する系を確立した.この結果,異種受容体混合クラスターの構造を推定し,リガンド存在下での変化を追跡することが可能になった. 3.走化性受容体の細胞膜内クラスターの解析:Tar, Tar-GFP, Tar-TCを全受容体遺伝子欠失大腸菌株に発現させ,凍結割断レプリカ法により内膜の微細形態を観察した.より詳細な解析の結果,Tarの局在場所と無粒子領域には直接の相関が見られなかった.今後はTarを標識する方法を確立しつつ,無粒子領域の実体も明らかにする必要がある. 4.異物排出トランスポーター複合体:内膜と外膜を貫く構造体として異物排出トランスポーターと外膜チャネルTolCの複合体の検出を試みた.具体的には,野生株とtolC欠失株を用いて凍結割断レプリカ法による観察を行った.
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