研究課題/領域番号 |
24657110
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研究機関 | 光産業創成大学院大学 |
研究代表者 |
井出 徹 光産業創成大学院大学, その他の研究科, 教授 (60231148)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 1分子操作 / イオンチャネル / kcsa |
研究概要 |
人工脂質平面膜を用いた単一チャネル電流記録装置と走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)を融合し、チャネルタンパク1分子のみを操作・照明できる光学系を構築することが目的である。力学刺激はプローブの操作によって導入し、分子間相互作用・構造変化は蛍光エネルギー移動などによって検出する。これを用いて、制御因子との結合解離、構造揺らぎと電流揺らぎを1分子レベルで同時計測することによって、KcsAチャネルタンパクの活性化に至る分子間、あるいは分子内情報伝達を実時間で直視可能とすることを目指す。 1)光学系(単一チャネル電流記録法とSNOMの融合):1分子蛍光観察用顕微鏡とSNOMを融合させることに成功した。ここでは便宜的にSNOMと呼んでいるが、イメージングの必要はないので(Scanningの必要なし)、ガラス微小探針へのレーザ照明の導入、及びプローブの操作系開発が主眼となった。 2)プローブ開発:本研究の最大の技術的特徴は、プローブに固定したチャネルを人工膜に直接挿入する再構成法にある。より組込効率を上げるため、プローブ先端の形状、表面修飾、チャネルタンパクの固定法など、再構成条件を検討、改良した。 3)電流計測装置(人工膜装置):人工膜は、疎水性隔壁(テフロンフィルムなど)上の開口に形成する。従来の装置では膜の揺動を防ぐため、人工膜はアガロース層に支持される形で形成した。本研究では、探針を透明素材にする他に、膜下方よりの制御因子結合を観測するため、アガロース層の形状、濃度等に改変を加えた。アガロース層を持たない実験系の構築にも成功しており、人工膜下方よりの因子の結合解離を直視できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の計画通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
・チャネル・阻害物質間相互作用の1分子計測:細菌由来のKチャネル(KcsA)を大腸菌に発現させ精製する。このチャネルタンパクの変異体を作成し、蛍光標識、プローブへの固定を行う。KcsAは、シリコン(AFM)探針による直接挿入による再構成に成功しているタンパクで、力学刺激による活性化も記録されている。また、これは蛍光標識された阻害剤(AgTX)による阻害が確認されているので、阻害剤との結合解離が1分子イメージング可能である。阻害剤との相互作用を1分子計測し、併せてこれを用いて開発した顕微鏡の評価を行い、より汎用性の高い装置へと改良を加える。 ・構造変化の1分子計測:上記装置を用いて、力学刺激時におけるKcsAチャネルの機能変化と構造変化を同時計測する。構造変化は、蛍光共鳴エネルギー移動、あるいはスプリット型蛍光タンパクを用いる。先行研究が全くないので、実際には試行錯誤を繰り返しながら、実際の計測、装置改良を繰り返して行くことになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、本助成金は消耗品(光学部品、遺伝子工学・生化学用試薬など)、及び実験補助者の謝金に充てる。
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