今後の研究の推進方策 |
X線と比較して荷電粒子である電子の散乱因子は、電荷を持つ場合、特に低角側で大きく異なる。従って、この領域のデータを含めた密度マップと含めないものを比較することで、電荷の分布を解析できる可能性が指摘されている(1, 2)。今後、カタラーゼとCa2+-ATPaseの回折データを用いて、アミノ酸側鎖の荷電の状態を詳細に解析し、分子の機能に及ぼすクーロン力の影響を詳細に解析する。 結晶化の試みで、X線回折には適さない非常に薄い結晶しか得られないこともある。薄い結晶から新規の構造が解析可能となる汎用性の高い技術として確立することを目指して、重原子置換体からの電子線回折の集める他、電子顕微鏡で実像を一部撮影し、位相情報の取得を試みる。さらに、細菌のいろいろな生命活動にプロトンやナトリウムイオンの流れをエネルギーとして供給する膜蛋白質ファミリーの結晶化を行い、薄い結晶が得られた場合、電子線回折による新規構造の解明を目指す。 (1) Kimura Y., Vassylyev D. G., Miyazawa A., Kidera A., Matsushima M., Mitsuoka K., Murata K., Hirai T. & Fujiyoshi Y. Nature 389: 206-211 (1997). (2) Mitsuoka K., Hirai T., Murata K., Miyazawa A., Kidera A., Kimura Y. & Fujiyoshi Y. J. Mol. Biol. 286: 861-882 (1999).
|