研究課題
生体マシンの作動原理の解明、創薬への応用を目指し、生体分子が機能を発現する上で本質的に重要な因子となるクーロンポテンシャルの可視化を行った。X線は原子の電子雲に散乱されるのに対して、電子は原子のクーロンポテンシャルに散乱される。クーロン力は長距離に渡って作用するため、いろいろな生命活動に大きな影響を及ぼす。例えば、プロトン輸送やイオンの配位、蛋白質の安定性、化学反応にも深く関与している。本研究では、蛋白質のごく薄い三次元結晶の電子線回折から、そのクーロンポテンシャルマップを得る新技術の開発を目指した。クーロンポテンシャルは、X線結晶構造解析では得ることのできない情報であり、これまでに実験的に測定する汎用的な手法は存在しなかった。26年度は、筋小胞体Ca2+-ATPase、牛肝臓カタラーゼのごく薄い三次元結晶から集めた電子線回折パターンを処理し、それぞれ3.4 Åと3.2 Å分解能のクーロンポテンシャルマップを取得した。中性とイオン化した原子の電子線に対する原子散乱因子を用いて詳細に解析した結果、アミノ酸側鎖、金属イオンの荷電状態の可視化に成功した(Yonekura et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2015)。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 112 ページ: 3368-3373
10.1073/pnas.1500724112
Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 8074
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Nat. Commun.
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http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150223_1/