研究課題
(1)PbaBのシャペロン活性とプロテアソーム分解促進機能の解明: PbaB がATP非依存的に9残基からなるモデルペプチド基質および140残基の天然変性タンパク質α-シヌクレインのプロテアソーム分解を促進することを明らかにした。また、その活性化促進は20Sプロテアソームとの結合モチーフであるC末端部分を介して担われていることを示した。さらに、PbaBはシャペロン活性(変性タンパク質の凝集阻害能)を有し、その機能はやはりC末端部分に担われていることを突き止めた。(2)PbaBのシャトル型プロテアソーム活性化機能の実証: 基質タンパク質との結合を契機にPbaBがプロテアソームに高親和性を獲得するのか否かを検討した。PbaBとの結合が確認されたα-シヌクレインをモデル基質タンパク質として、その基質存在下および非存在下におけるPbaBと20Sプロテアソーム(不活性型)とのプルダウンアッセイを行った。その結果、少なくともα-シヌクレインのPbaBへの結合は、PbaBと20Sプロテアソームの相互作用に対して影響を及ぼさないことが明らかとなった。(3)プロテアソーム活性化因子PbaBの作動メカニズムの解明: X線結晶構造および電子顕微鏡解析により、PbaBはホモ4量体構造を形成しており、触手のように伸びたC末端部分を介して成熟型20Sプロテアソームに結合することを見出した。以上の結果に基づき、一部のC末端を介して20Sプロテアソームの両端に結合したPbaBが、残りのサブユニットのC末端部分で変性タンパク質を捕捉し、プロテアソームへ導くことによりその分解を促進するというモデルを提唱した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の遂行を通じて、PbaBはアッセンブリーシャペロンではなく、プロテアソームの活性化因子として機能していることを明らかにした。さらに多角的な構造機能解析を行い、PbaBの作動メカニズムの実体解明に迫ることができた。本研究成果は、2013年3月21日付けのアメリカの科学雑誌PLoS ONEに掲載された [Kumoi et al. (2013) PLoS ONE, 8, e60294]。当初の予想を越えて、PbaBはプロテアソームと結合した状態でも基質を分解へ導く仕組みを有することが示唆された。この新規なメカニズムに関しては今後より詳細な検討を行う予定である。平成25年度に研究実施予定であったX線結晶構造および電子顕微鏡解析は既に完了している。以上、総合的に判断して極めて順調に研究は進展している。
【プロテアソーム活性化因子PbaBの作動メカニズムの解明】PbaBの作動メカニズムを解明するために、Pyrococcus furiosus由来のPbaBおよびプロテアソームを用いて、NMR分光法、中性子小角散乱法などの多面的な動的高次構造解析を展開する。PbaBの4次構造のダイナミクスおよび基質タンパク質や20Sプロテアソームとの動的相互作用は、超高磁場NMR分光法、中性子小角散乱法により明らかにする。具体的には、分子科学研究所に設置されている超高磁場920Mz NMRを活用することで、PbaBと変性タンパク質との相互作用の実体を原子レベルで明らかにする。一方、中性子小角散乱計測を通じて、重水素化したPbaBを用いて基質タンパク質およびプロテアソームとの結合・解離に伴うPbaBの高次構造ダイナミクスを明らかにする。in silico分子シミュレーション解析は、本機構の大規模計算機を利用し、実験と理論の相互補完を図る。
該当なし
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PLoS ONE
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