研究課題
PbaBの作動メカニズムを解明するために、本タンパク質が基質タンパク質を捕捉する際の分子間相互作用様式をNMR分光法および中性子小角散乱法を利用して明らかにすることを試みた。Pyrococcus furiosus由来PbaBおよびモデル基質として天然変性タンパク質であるα-synucleinを用いた。重水素標識を利用した逆コントラストマッチング中性子小角散乱法によって、PbaBの4量体と複合体を形成しているα-synucleinの溶液散乱を選択的に観測し、その構造情報を得ることに成功した。その結果、PbaBに捕捉されるに際してα-synucleinの慣性半径は単独の状態と比べ有意に小さくなることが明かになった。また、α-synucleinは分子の一部に僅かながらαへリックス構造を有しているが、PbaBの結合に伴い、この構造が崩れることも見出した。一方、NMR解析により、α-synucleinは主にN末端付近の残基(37-42番目)を介してPbaBに結合していることが明かとなった。興味深いことに、α-synuclein上のPbaB結合部位は、分子中で僅かにαへリックスを形成している領域と一致していた。このように中性子小角散乱とNMR分光法の連携を通じて、PbaBとの結合に伴うα-synucleinの構造変化を捉えることができた。本研究を通じて確立した手法は、PbaBの機能発現メカニズムの解明をもたらすばかりでなく、複合体を形成している天然変性タンパク質の構造情報を取得するためのアプローチ法としても広く有用である。以上の成果は、学術雑誌[J. Appl. Crystallography, 47,430-435 (2014) ]に掲載された。
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J. Appl. Crystallography
巻: 47 ページ: 430-435
doi:10.1107/S1600576713033475