研究課題
挑戦的萌芽研究
ゲノム配列の解析から大腸菌すべての種に保存されているtRNA様の配列を発見した。この配列は、tRNAのクローバーモデルの上半分(CCA-3’末端、アミノ酸受容ステム, Dアーム, Tアーム)とそっくりの二次構造を取りうるが、中央部分はtRNAの下半分(アンチコドンアームとバリアブルアーム)はtRNAと大きく異なる。ノーザン解析 の結果、この配列がRNAとして細胞内で発現していることを確認したので、txRNAと名付けて、解析を開始した。本研究は、分子遺伝学的手法ならびに生化学的手法を使ってその構造と機能を解析することを通して、細胞内での働きと、それに関与する生体内反応と分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度はこのRNAを単離することから始めたが、発現量が少なく、困難を極めた。しかも、ノーザン解析からその配列がtRNAサイズより長く(約200塩基)で転写され、代謝的に不安定なRNAであることから、tRNA様の構造自体が機能単位ではなく、mRNAの一部である可能性が出てきた。実際、txRNA配列を含む転写産物が、60アミノ酸からなるペプチドをコードしており、それが翻訳されうることを、LacZ-fusion実験等で明らかにした。従って本研究は、当初の予想とは全く異なる展開となったが、tRNA様配列をコード領域にもつmRNAの始めての発見となり、より興味深いテーマに発展したといえる。今後、その翻訳産物の検出、その構造、機能の解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
当初の予想とは異なる展開となったが、着実にデータを積み重ねており、興味ある進展が予想される。
1.tRNA様配列を含む転写産物(RNA)がmRNAであることの最終証明として、その産物をin vitroとin vivoの系を用いて検出する。2.この遺伝子と産物の生理的機能を様々な生理的条件下での欠損株や大量発現株を用いて明らかにする。
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