研究課題
本研究はすべての大腸菌ゲノムに高度に保存されているtRNA様配列の発見をもとに、その遺伝子と産物の機能を明らかにすることを目的とした。当初、この配列は新しい低分子RNAであることを想定したが、解析の結果予想に反して、この配列は短い塩基性ペプチドをコードするmRNAの一部であることが判明した。その根拠は:(1)ノーザン解析の結果転写産物は約200塩基長であり、代謝回転が早いこと。(2)その5’ー端はtRNA様配列の約100塩基対上流のプロモーター配列のすぐ下流のATGから始まり、(3)そのATGが翻訳の開始点でもあることの証明、等から大腸菌にはめずらしいleaderless-mRNAであることが明らかになった。tRNA様配列をコード領域に丸ごと含むmRNAは細菌では初めての発見である。本年度はこのmRNAがコードするペプチド産物(TxpA)の機能とtRNA様構造の意味を明きらかにするため、この遺伝子の欠損株を作成し、野生株と種々の培養条件下で増殖を比較したところ、タンパク合成を阻害する抗生物質に対する感受性の違いが見つかった。特に欠損株では30SリボソームのA-siteに作用する抗生物質(カナマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン等)に特異的に感受性の増加が見られる(低濃度で増殖が阻害される)。この事実はTxpAが30SリボソームA-siteを標的とする何らかの機能を持つことを示唆する。TxpAの発現量はリボソーム量と比較して遥かに低いので,リボソーム成分の一つとは考えられず、何らかのcataliticな働きを持つと予想され、現在、synthetic-lethal変異株を単離して、より詳しい機能を解析中である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件)
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