研究課題/領域番号 |
24657115
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 浩 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30611454)
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キーワード | RNA / 1分子イメージング / RNAサイレンシング / 核酸 / RISC / Argonaute / 全反射顕微鏡 |
研究概要 |
RNAサイレンシング機構を担うRNA-induced silencing complex (RISC) やRISC-loading complex (RLC) といった複合体の解析が進み,構成因子としてDicer,Argonaute (Ago),Hsc70/Hsp90などが同定された.しかし,これらの因子がどのように会合して機能的な複合体を形成するか,その順序と構造変化の詳細については未知である.本研究課題では,この謎を明らかにすべく,1分子イメージングにより,細胞内でのRISC形成における構造変化と相互作用を解析し,RISC形成の分子ダイナミクスを統合的に理解することを目的としている. 平成25年度はまず,平成24年度に構築したRISC形成過程のin vitro 1分子イメージング系を用い,前年度に同定したRISC形成の素過程と考えられる複数の段階について,さらなる詳細な解析を行った.その結果,Dicer-2/R2D2/dsRNA三者複合体は,シャペロン因子非依存的に結合と解離を繰り返すことを発見し,その時定数を明らかにした.また,AgoによるRNA取り込みに重要なことが知られているリン酸基結合ポケットの変異体を用いた実験から,リン酸基の認識が行われる素過程についての示唆的データを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
詳細な解析を行うにあたり,前年度に構築したイメージング系に生じる非特異的な輝点などの問題を克服するために,反応溶液の組成やpH,用いるタンパク質やRNAの調製法,ガラス基板の処理法などを細かく検討する必要が生じた.また,RISC形成の素過程について詳細な解析を行った結果,これまで生化学的に解析困難であったRISC形成過程の中間状態の存在を示唆する新たな知見を得た.in vitro 1分子イメージング系の改善とデータの解析および研究成果の取りまとめに時間を要し,細胞内1分子イメージング系構築の着手に遅延が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
AgoやDicer-2/R2D2などタンパク質因子を可視化し,細胞内で1分子観察を行うために,今後はこれらの因子の蛍光標識法について条件検討を進める.最終的には,RNAだけでなく,タンパク質の位置も同時に観察できる系の構築を試みる.また,細胞内で発現させたAgoは内在性のsmall RNAを取り込んでしまうことが知られており,RISC形成過程を細胞内で観察する時に,RNA二本鎖積み込みの効率が低下する.先行研究からRNAと結合していないAgoの分画は困難であると予想されるため,small RNAを取り込んでいないAgoの割合が増えるような培養条件や発現条件を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,平成26年3月までに,蛍光標識Ago2タンパク質を細胞内に導入し,細胞内1分子観察系を構築する予定であった.しかし研究計画の遂行中に,in vitro 1分子観察系において,これまで生化学的に解析困難であったRISC形成過程の中間状態を示唆する新たな知見を得た.in vitro 1分子観察系によるデータ解析と研究成果のとりまとめに8カ月を要し,細胞内1分子観察系構築の着手に遅延が生じた. 次年度は細胞内1分子観察系の構築に必要となる,蛍光標識Ago2タンパク質の調製と1分子観察系の最適化を試みる予定である.未使用額については,これらの実験に必要となるプラスチック消耗品,ガラス消耗品,トランスフェクション試薬,蛍光標識RNAオリゴマーの購入に充てることを計画している.
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