研究課題/領域番号 |
24657119
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古久保 哲朗 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (10271587)
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キーワード | 転写調節 / 転写因子 / 局所翻訳制御 / SAGA / 出芽酵母 / TFIID / TAF / TBP |
研究概要 |
基本転写因子TFIIDはTATAボックス結合タンパク質(TBP)と14種類のTBP随伴タンパク質(TAF)から構成される巨大な複合体であり、SAGA(TFIID類縁複合体)とともにコアプロモーター上で働き、TBP-DNA相互作用を制御することによって転写の活性化を行う。最近我々は、同一のプロモーターからTFIIDまたはSAGAによって転写されるCLN2 mRNA(以下CLN2 mRNA[TFIID], CLN2 mRNA[SAGA])が機能の異なる二種類のCln2pに翻訳される可能性を示した。またCLN2 mRNA[SAGA]は、RNA結合タンパク質の一種であるSsd1p依存的に転写され、分解から保護されるとともに、RAMシグナル経路による局所翻訳制御を受けることを示唆する結果を得た。一方、昨年度は、TFIID内部のTBP制御領域であるTANDの欠失変異(taf1-deltaTAND)がRAMシグナル経路の各種変異に対して特異的な合成致死性を示すこと、ならびにSsd1p依存的に分解から保護されるCLN2 mRNA[SAGA]量がtaf1-deltaTAND株において有意に増加すること等を明らかにした。 今回我々は、TANDの分子機能の詳細を明らかにするため、海外の研究グループとの共同研究を行い、TAND1-TAND2-TBP複合体の構造を決定した。得られた構造から、(i) TAND1はTATAボックスの一部の構造を分子的に擬態すること、(ii) TAND2はTFIIA/Brf1/Mot1と同様にTBP上の特定部位を認識することが明らかとなった。以上の結果は、TAND[TFIID]/TFIIA/Brf1/Mot1に共通する未知のTBP活性制御機構が、CLN2 mRNAの作り分け([TFIID] or [SAGA])に関与する可能性を示唆しており、大変興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TFIIA/Brf1/Mot1と同様に、TAND2がTBP上の特定部位を認識することが原子レベルで明らかとなり、これらの転写因子間に共通する未知のTBP活性制御機構がCLN2 mRNAの作り分け([TFIID] or [SAGA])に関与する可能性が新たに示唆されたため。
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今後の研究の推進方策 |
Ssd1pと以前に同定したもう一つのRNA結合タンパク質について、各々直接CLN2 mRNAに結合するか否かを調べる。また直接結合する場合には、CLN2 mRNA上に存在すると考えられる認識配列の決定を行うとともに、immobilized template assay法によりPCIDドメインとRNBドメインの役割分担について調べる。さらにm-TAG法を用いてCLN2 mRNA[TFIID]及びCLN2 mRNA[SAGA]の細胞内局在を調べ、Cln2pが有する二種類の機能との連関について新たな知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は海外との共同研究(NSMBに成果発表済み)を中心に研究を進めたため、当初予定していた経費については次年度以降に使用することとした。 本来は今年度に行う予定であった実験計画と、海外との共同研究において得られた成果に基づく新たな実験計画について、物品費(細胞内局在観察用試薬購入費、innobilized template assay用試薬購入費)として使用する予定である。
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