我々はこれまでの研究で、齧歯類に特異的に存在し、レトロトランスポゾンSINE B1に高い相同性を示す4.5SHと呼ばれるノンコーディングRNAが核内に局在していること、それらがSINE B1がアンチセンス方向に挿入されたmRNAを核内に繋留することで、その発現を負に制御していることを見出していた。そこで、4.5SHが実際に核内でSINE B1のアンチセンス挿入配列と二本鎖構造を形成しているかどうかを検討するために、イノシン化修飾に注目した解析を行った。一般に、核内の二本鎖RNA構造はADARと呼ばれる酵素に認識され、アデノシンが脱アミノ化を受けてイノシンに変換される。そこで、SINE B1がアンチセンス方向挿入されたレポーター遺伝子とセンス方向に挿入されたレポーター遺伝子を発現する細胞からRNAを回収し、それぞれのSINE B1部分をRT-PCRで増幅し、次世代シークエンサーを用いて配列解析行った。その結果、アンチセンス方向への挿入された時のみ、イノシン化修飾が見られ、それはADAR依存的であることも確認された。さらに、4.5SHにたいするアンチセンスオリゴ核酸を用いてターゲットとなるmRNAを精製したところ、4.5SHをノックダウンした際に核内繋留が解除される複数の遺伝子が濃縮されることが分かった。また、二本鎖RNA結合蛋白質であるNF110が4.5SHおよびアンチセンス挿入SINE B1配列と複合体を形成していること、その結合が4.5SH依存的であることも明らかとなった。 これらの制御が生体内で実際に働いているかどうかを検証するために、CRISPR-Cas9のシステムを用いてNF110特異的なエクソンにナンセンス変異を導入した個体の作製も試みた。その結果、片方のアリルのNF110が特異的にノックアウトされた個体を2ライン作製することができた。
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