研究概要 |
細胞膜上の受容体分子は、リガンドを結合すると細胞内に取り込まれ、やがてリソソームで分解されるが、トランスフェリン受容体や一部のアミノ酸トランスポーターなどはリサイクリングエンドソームを経由して細胞膜へとリサイクルされる。しかし、同じ蛋白質分子が永遠に使い続けられるとは考え難く、何らかの品質管理機構が存在すると想定されるが、これまでリサイクルされる蛋白質分子の分解に関する知見はほとんどなかった。これまで当研究室では、トランスフェリン受容体の恒常的分解過程に低分子量G蛋白質Rab12が関与すること、Rab12により制御されるリサイクリングエンドソームからリソソームへの新規輸送経路が存在する可能性を示唆してきた。本研究課題では、リサイクルされる蛋白質の分解の生理学的意義の解明に取り組み、昨年度までにRab12依存的に分解される新規リサイクル分子としてアミノ酸トランスポーターPAT4を同定し、細胞増殖制御への関与を明らかにしている。本年度は、Rab12の時空間的制御基盤を明らかにするため、上流に位置する活性化因子(GEF, guanine nucleotide exchange factor)の候補分子の探索を行い、DENNドメインを含むRab12活性化因子候補の同定に成功した。この候補分子をRNA干渉法によりノックダウンすると、細胞内の活性化型Rab12の量が顕著に減少し、トランスフェリン受容体やPAT4が細胞内に蓄積することを見出した。今後、この候補分子の機能解析を詳細に行うことによりRab12の活性化機構の分子基盤を解明すると共に、細胞増殖やオートファジー(自食)に対する影響を検討して行く予定である。
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