研究実績の概要 |
我々は精製したアクチンとコフィリンからなる再構成実験系を用いて、アクチン線維に張力が発生している状態ではアクチン切断タンパク質コフィリンによる切断活性が抑制されることを報告しており、本課題はその分子機構の解明を目的としておこなわれた。まず、アクチン線維に張力が発生していない状態のアクチン-コフィリン相互作用を全反射照明顕微鏡を用いて一分子レベルで解析した。アクチン線維のゆらぎとコフィリンの結合が相関していたことから、張力がアクチン線維のゆらぎを減少させた結果、コフィリン結合が抑制されたことが示唆された。その結果は学術論文として発表した(1)。次に、全反射照明顕微鏡を用いたライブ観察下で、単一アクチン線維に牽引力を負荷しながらアクチン-コフィリン相互作用の一分子観察が可能な実験系の構築を試みた。シアノ基を持つシラン化剤を用いて、サイトカラシンDをガラス表面に直接固定することによってアクチン-ビオチン標識アクチン共重合線維のb端をガラス表面に固定した。固定したアクチン線維にアビジン標識した磁気ビーズを結合させて電磁石でビーズを牽引し単一アクチン線維に張力を発生させた。しかしながらアクチン線維を牽引するとアクチン線維がガラス表面からわずかに遠ざかり全反射照明の強度が減衰するために、同時にコフィリンの結合を一分子レベルで観察するのは困難であった。光ピンセット法でも同様の問題が発生した。現時点においてアクチン線維の牽引とアクチン-コフィリン相互作用の一分子観察が両立する実験系は構築出来ておらず、今後の検討課題となった。
1.Hayakawa K, Sakakibara S, Sokabe M, & Tatsumi H (2014) Proc Natl Acad Sci U S A 111(27):9810-9815.
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