様々な細胞機能を制御する生理的な小胞体Ca2+が成立するためには、内腔側の陰荷電を効率的にカウンターイオンにて中和する機構が必要であると仮想されている。研究代表者らが分子同定したTRICチャネルは、細胞内膜系に分布するK+チャネルとして、Ca2+放出時のカウンターイオン動態に寄与することが示唆されている。しかしながら、TRICチャネル以外にもカウンターイオン動態に寄与するチャネルやトランスポーターが依然として想定されることから、その候補膜タンパク質の分子検索を本研究の目的とした。昨年度のin silico検索にて注目された膜タンパク質Tmem52については、免疫化学実験にて筋小胞体の分布パターンが示唆されたが、siRNAノックダウン実験では筋小胞体Ca2+放出への寄与は確認できなかった。平行して遂行した遺伝子ノックアウトは順調に進展し、数か月以内にTmem52欠損マウスが得られるものと期待される。また、免疫抗体法による検索により、Ca2+放出部位である筋小胞体終末部に特異的に分布するミツグミン56が見出された。分子構造上は膜貫通型脂肪酸転移酵素ファミリーに所属するミツグミン56についても、小胞体Ca2+放出への関与が期待される。
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