COP9シグナロソームの第5サブユニット(CSN5)を組織特異的に条件性ノックアウトできるマウスシステムの作製を試みた。タモキシフェンにより誘導可能なCRE組換え酵素遺伝子を、骨髄で特異的に活性化されるエンハンサーとプロモーターに連結した発現ベクターに組み込み、B6マウスの受精卵に導入し、産児を得た。これをB6マウスと掛け合わせてトランスジーンが安定にゲノムに取り込まれた系統マウスを3種類得た。これらをそれぞれCSN5 Floxマウスと掛け合わせてその子孫をさらにCSN5 Floxマウスと掛け合わせることにより、CSN5 Flox/Flox CRE-ERマウスを作製した。このマウスにタモキシフェンを腹腔内注射したところCSN5のFlox遺伝子座が減少する結果を得た。さらに、十分数のマウスで同様の実験を行ったが、CSN5のFlox遺伝子座の減少は見られるものの、消失することはなかった。また、掛け合せを進めるとタモキシフェンによる反応が鈍くなる傾向にあった。数回の独立した試行の結果、この方法では研究対象とする現象で予想する仮説と矛盾しない結果は得られるが、切れ味が悪く、本研究を進めるに十分な結果を得ることは難しいと判断した。 そこで、モデルシステムとしてK562細胞株をTPA処理して巨核球に分化させるin vitro誘導系を用いて、COP9シグナロソームの動態を解析した。その結果、巨核球への分化過程において、CSN5の発現レベルは一定に保たれているが、他のサブユニットに変化が認められることが判明した。その後、関与する変異体を作製しK562細胞に導入して解析結果を得た。現在は、よりin vivoに近い系でこの結果を確認するために、CSN5 Floxマウスの骨髄にCRE遺伝子を導入してin vitro分化誘導系で再現性を検討している。これらの結果が得られしだい、論文にまとめて発表する。
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