研究課題
ミトコンドリア(Mtと省略)は融合と分裂によってダイナミックに形態を変化させるがこの動態はアポトーシスの調節や細胞機能維持に必須であることが明らかになってきた。例えば融合・分裂機構の障害は各種神経変性疾患(Optic atrophy、ハンチントン病、パーキンソン病など)の原因となる。組織特異的な遺伝子ノックアウト(KO)マウスの解析や病態解析によってここ5年ほどの間に融合・分裂反応の細胞機能への関わりの研究が著しく進展したのに比べ、Mtの融合・分裂の反応機構とりわけ哺乳類Mtの分裂の分子機構研究は格段に遅れている。本年度は(1)Mt外膜上に存在し、Mt分裂GTPase Drp1の受容体と考えられていたhFis1がDrp1受容体としては機能していないことを明らかにし、さらに(2)hFis1結合因子としてRab-GAP蛋白質TBC1D15を同定した。(3)我々が同定したDrp1結合因子Mffについてそのノックアウトマウスの作成に成功した。(4)Mt分裂因子Drp1を組み替え体として大腸菌より精製し、これを用いて電子顕微鏡による形態観察をおこなっている。(5)上記Drp1を用いてミトコンドリア上での動態を高速AFMによって解析を開始した。
2: おおむね順調に進展している
単離したミトコンドリアを用いてのDrp1に依存する分裂反応の再構成には至っていないが、その反応に関連する因子の性質解明、ならびにDrp1分子そのものの形態変化、脂質膜上での挙動解析、ミトコンドリア上での挙動解析は順調に進行している。またDrp1のミトコンドリア上受容体であるMffのノックアウトマウスが作成できたので、Mffの生理機能解析に大きな進展がみられることが期待される。
(1)電顕観察ならびに高速AFM観察によってDrp1自身の動態ならびに膜(リポソームならびにミトコンドリア)上での動態を観察する。(2)MFFノックアウト(KO)マウスの解析ならびにMff-KO MEF細胞を用いてDrp1によるミトコンドリア分裂の機構と高次機能解析を行う。(3)これらの情報に基づいてDrp1と精製ミトコンドリアを用いて試験管内で分裂反応を再構成する。
細胞培養やタンパク質精製に必要な試薬類、器具類の購入、KO-マウスの維持費、論文作成の費用などに用いる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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